外国人が日本で生活するには、ある程度の日本語能力が欠かせません。特に周囲の方との意思疎通ができなければ、仕事に支障も出てしまいます。
そして就労目的の在留資格で日本に訪れる外国人の方にも同じことが言えるでしょう。特定技能の日本語試験は、そうした日常生活で必要となる日本語能力を測るものです。
ここでは日本語試験の概要や学習のポイント、開催日などについてご紹介していきます。

特定技能の取得に必要な日本語試験とは?

特定技能を取得する際には、各分野で技能水準を測る試験と日本語能力を測る試験があります。中でも日本語試験は、「日本語能力試験」と「日本語基礎テスト」の2種類に分かれており、そのどちらかで合格する必要があります。

ではそれぞれの日本語試験について詳しく見ていきましょう。

日本語能力試験

引用元 日本語能力試験 JLPT

日本語能力試験は、「国際交流基金」と「日本国際教育支援協会」の2つの法人が運営している制度です。この試験では外国人の日本語能力を測定し、客観的な評価を行います。

試験自体が30年ほどの歴史を持っており、様々なものがある日本語試験の中で最も知られている検定と言っても過言ではありません。そのためこの試験は特定技能だけでなく、日本の医師の国家試験や准看護師試験などを受験する条件としても設定されているのです。

基本的に受験する人が多い大規模試験となるので、機械が自動的に採点を行うマークシート方式での解答になります。この方式では採点ミスを抑えられ、人の手で実施するよりも効率的に作業を進められるのがメリットです。

試験を構成しているのは、

  • 言語知識(文字や語彙、文法)
  • 読解
  • 聴解

の3要素。これらの日本語水準を測ることで、受験者のコミュニケーション能力を確認しています。

日本語能力レベル N1~N5

日本語能力試験は、N1〜N5までのレベルが設定されています。試験の内容も異なり、難易度でいうと最も簡単なのがN5で一番難しいのがN1です。

日本語能力レベルN5

N5はひらがなやカタカナ、「新しい」などの簡単な漢字などの単語や文章を理解できるぐらいの内容となります。しっかりと意思疎通することは難しいものの、挨拶や自己紹介などでコミュニケーションを取れるレベルです。

日本語能力レベルN4

N4は漢字などの単語だけでなく、ある程度の文章の読み書きができるレベル。日常会話も少しこなせる程度です。問題集では、「通う」「送る」など漢字が出題されています。

日本語能力レベルN3

N3は、日常会話が問題なくできる程度のレベルになります。しかしビジネス上での会話など、ニュアンスによっては理解できないことも。漢字のレベルでいえば、「代表」といった2文字の組み合わせが読み取れる程度です。

日本語能力レベルN2

N2は、違和感なく日常会話を行えるレベルです。日本語での討論なども可能なほどで、仕事においてもしっかりと意思疎通することが可能です。問題例を見る限りでは、説明文にもふりがなのない漢字が多く、日常的に使う漢字の多くを覚える必要があります。

日本語能力レベルN1

N1は、公立高校入試の日本語レベルが求められます。また読み書きできる常用漢字も、2万字ほど習得する必要があるでしょう。日常会話以外にもビジネスや専門用語などが理解できるため、一般的な日本人と同等の能力があります。

特定技能取得に必要な日本語能力レベルは?

特定技能1号の取得には、下から2段階目の難易度となるN4相当に合格することが必須事項です。

受験資格

日本語能力試験の受験資格はかなり広く、母語が日本語でないなら年齢制限もなく誰でも受験することが可能です。

ここで重要なのは「母国語」ではなく「母語」という点。母国語とは、自分の国の言語のことで、日本で生まれたなら日本語、アメリカなら英語という認識です。しかし母語とは、生まれてから最初に習得した言葉になります。

つまり日本で生まれたとしても、「親が外国人だったため英語しか話せない」という人でも受験できるということになるのです。

学習方法のポイント

日本語能力試験では、レベルごとに試験の内容も異なります。そのため自分の受ける範囲に合わせて、適切な日本語を覚えたり問題集を解いたりするのがポイントです。

まず簡単にできる学習方法としては、WEB上で閲覧できる公式の問題集のサンプルなどを参考にすると良いでしょう。

具体的には、以下のようなものがあります。

これらの問題例は、N1〜N5までのレベルごとに用意されています。しかも文章形式だけでなく音声ファイルも聴けるため、「聴解」に関する学習も可能です。

問題例に挑戦すると分かりますが、N1レベルになれば日本人でも間違える問題が出てきます。そのため実際に試験を受ける方が、現在どの程度のレベルかを測定する際にも便利です。

より厚みのある問題集を求めている方には、公式から出版されている書籍の購入をおすすめします。

書籍についての詳細はこちら

日本語能力試験 認定の有効期限

日本語能力試験の認定結果には有効期限はありません。ただし、試験の結果を参考にする企業や学校などによっては有効期限を設けていることもあります。心配な場合は、企業や学校に直接確認してください。

国際交流基金日本語基礎テスト

引用元 JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト

日本語基礎テストは、独立行政法人国際交流基金が主催する試験になります。この制度では、日本語で何がどれだけできるのかを測定することが目的です。

外国人の方などが日本で生活するためには、「ある程度の日常会話ができること」「生活に支障がない程度の言語能力」などが必要となります。日本語基礎テストは、そうした日本語能力があるかどうかを判断するために活用されるものです。

試験には、CBT(Computer Based Testing/コンピューター・ベースド・テスティング)方式と呼ばれる方式が採用されています。これは各会場に設置された機器の画面を操作しながら、問題を解いていく方法。画面に表示された問題やヘッドフォンから流れてくる音声を聞き取り、表示された答えを選択するのです。

また特定技能1号の取得での利用を想定しているので、日本で働くために来日する外国人の方がテストの対象になります。試験の開催についても、主に海外の会場で実施されているのが現状です。

例えば2020年3月に実施される国は、

  • フィリピン
  • カンボジア
  • インドネシア
  • ネパール
  • モンゴル
  • ミャンマー

などが挙げられます。

そして今のところ、日本では特に実施される予定はありません。日本国内で日本語試験を受ける際には上記の「日本語能力試験」、海外の現地で試験を受ける際にはこちらの「日本語基礎テスト」という住み分けがなされています。

日本語能力レベル A1~2、B1~2、C1~2

日本語基礎テストでは、「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4つの科目から問題が出題されます。いずれも日本での生活を想定したものであり、日常でどれだけの日本語を使いこなせるかを判断するものです。

その判断基準となるのが、A1〜A2、B1〜B2、C1〜C2といったレベル指標になります。内訳はA1が最も低く、右に行くほどレベルが上がっていきC2が一番高いです。

アルファベットが変わると日本語への理解度もグッと上がる印象で、

A1~A2 基礎的な日本語のやりとりができる程度
B1~B2 自立した生活ができる程度
C1~C2 熟達しており不自由なく日本語を扱える

となります。

特定技能1号の取得においては、A2レベル以上の日本語能力をもっていることが条件です。A2レベルでは主に個人情報や家族情報、仕事などの自身と接点がある事柄に関しての簡単な説明ができる程度と認定されます。

受験資格

日本語基礎テストの受験資格は、原則として母語が日本語ではない方です。ただ国によっては、追加事項もあります。

例えばインドネシアやミャンマー国籍の方は、試験日の時点で18歳未満だと受験することができません。その他の国籍では受験資格についての記述はなかったものの、事前に確認しておいたほうが無難です。

試験に関するお問い合わせ先については、公式サイトを参照してください。

学習方法のポイント

日本語基礎テストでは、公式サイトで役立つ教材などをいくつか紹介しています。そしてそのどれもが無料で利用できるため、これから学習する初心者の方でも取り組みやすいです。

ただしこちらのURLでは様々なものが紹介されているため、どれを選べばいいのか迷う方も多いでしょう。学習する際のポイントとしては、日本語を学ぶ方のレベルに合わせた教材を使うことです。

例えば、特定技能の取得に必要なA2レベルはそこまで難易度が高いわけではありません。しかし最初に触る教材なら、A1レベルの内容から学べる「JFにほんごeラーニング みなと」「まるごと+(プラス)」などが学習しやすいです。

外出中のちょっとした隙間時間などでも効率的に学びたいのであれば、スマホアプリである「HIRAGANA/KATAKANA Memory Hint」も使い勝手が良いでしょう。

また試験の雰囲気を感じたいだけなら、公式サイトが用意しているサンプル問題も確認してみてください。

JFT-Basic サンプル問題の詳細はこちら

こちらは実際のテストで表示されるような画面となっているため、受験する際のイメージがしやすいはずです。

日本語能力試験との違い

日本語能力試験と日本語基礎テストは、似ているようで違う点がいくつかあります。例えば日本語能力試験の開始年は1984年。運営している年月が長いこともあり、86ヶ国で試験が開催されます。

しかし日本語基礎テストが開始されたのは2019年と新しく、開催国も9ヶ国と少ない印象です。ただし開催時期は、奇数月の実施を予定している日本語基礎テストのほうが多いです。日本語能力試験では、基本的に7月上旬と12月上旬の年2回開催となります。

そして試験では、マークシート方式とCBT方式という点で異なります。これらの方式は機械で集計するという点では同じですが、マークシートだと試験結果が返ってくるまで2ヶ月ほど。その点CBT方式である日本語基礎テストなら、その場で合否結果を確認することが可能です。

その他にも、

 日本語基礎テスト日本語能力試験
試験時間60分105~170分(N5~N1で異なる)
受験費用約3,000円(国ごとに異なる)6,500円

などの細かい違いがあります。

日本語能力試験 スケジュール

日本国内での試験スケジュール

全国47都道府県で実施されますが、直前まで試験会場が確定しないため、具体的な会場名や場所などの案内は受験票で受験者に告知されます。

2021年 第1回試験2021年7月4日(日)実施
全国47都道府県で実施予定。
【申込期間】
2021年3月26日(金)~2021年4月16日(金)17時まで
【受験料】
6,500円(税込)
2021年 第2回試験2021年12月5日(日)実施
全国47都道府県で実施予定。
【申込期間】
2021年8月26日(木)~2021年9月16日(木)17時まで
【受験料】
6,500円(税込)
諸注意

新型コロナウィルスの影響で試験が中止になる場合もあります。公式サイトのアナウンスを確認してください。
公式サイト: JEES 日本語能力試験

海外での試験スケジュール

日程の詳細は下記の公式サイトでご確認ください。

国際交流基金日本語基礎テストスケジュール

諸注意

新型コロナウィルスの影響で試験が中止になる場合もあります。公式サイトのアナウンスを確認してください。
公式サイト: JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト

試験の日程や会場が変更になる可能性もありますので、受け付け状況など詳細は以下のPROMETRICのページを参照してください。

国外試験

日本国内試験

介護に必要な日本語のレベルはこの2つとは違うの?

日本語能力試験と日本語基礎テスト以外にも、介護分野で受験が必要になる「介護日本語評価試験」というものがあります。

こちらの試験で求められるのは、介護現場での業務に支障のない程度の日本語能力です。専門的な単語や文書でのやりとりも想定されるため、一般的な日本語能力試験などと比べると難易度は上がるかもしれません。

ただし直近の合格率を見ると、国によって40〜90%ほどとかなりブレがあります。その要因として考えられるのは日本との文化の違いや、すでに通常の日本語能力試験を受験しているかなど。問題数が15問、試験時間も30分ほどと他の日本語試験よりボリュームが少ない点も、合格率に影響しているかもしれません。

それぞれのメリット・デメリットを理解して日本語試験への理解を深めよう

特定技能1号の取得には、日本語試験で定められたある程度の水準を超える必要があります。ただし2つの試験でそれぞれ特徴やメリット・デメリットなどが異なるため、どちらのほうが最適なのかを吟味することも重要でしょう。

中でも特定技能に合わせて設けられた日本語基礎テストは、まだ開始してから間もない試験です。積極的に開催されてはいるものの会場となる国自体は少なく、4月以降は新型コロナウイルスの影響で中止するところも相次いでいます。

その点、日本語能力試験は年2回開催ながらも一度に実施される会場が多いため、完全に試験が止まる可能性は低いでしょう。とはいえ特定技能の取得を目指している人向けの試験内容となっているので、海外での受験を考えている外国人の方には日本語基礎テストのほうが受けやすいはずです。