在留資格である特定技能1号は、国内のみならず海外でも試験を実施しています。そして試験の内容やスケジュールはそれぞれ異なるので、把握するのも一苦労でしょう。
特に海外での試験は環境が整っていない国も多く、どこで開催されるかを逐一チェックしておかなければ見逃してしまうことも。そこで今回は、特定技能1号の試験内容や開催日などのスケジュールについて詳しく解説していきます。

特定技能1号の国内試験の受験資格

特定技能1号の国内試験の受験資格

外国人の方が特定技能1号を取得するには、技能試験と日本語試験に合格する必要があります。しかし令和2年3月31日までは、日本国内で試験を受けることが難しい人もいました。

その理由としては、

  • 中長期的な在留資格や在留経験がない人
  • 退学や除籍された留学生
  • 技能実習の途中で失踪した経験のある人
  • 難民申請などで在留している人
  • 技能実習中などの活動で在留している人

などに当てはまると受験できないことが挙げられます。中でも中長期的な在留経験がないと試験を受けられないことは、特定技能の対象者を狭めていました。

もともと特定技能は、日本企業の人手不足を補うために設けられたものなので、受験できない方が多いのは本末転倒と言えます。そこで政府は、令和2年4月1日から国内試験の受験資格を拡大したのです。

具体的には、

  • 在留経験に関係なく受験が可能
  • 不法滞在などの在留資格を持っていない場合は、これまでと同様に受験不可

というもの。以前と違うのは、短期滞在の在留資格で日本に訪れている方や技能実習中でも試験を受けられるようになった点です。

受験資格の緩和により、特定技能の試験を受ける目的だけで日本に来日することが可能です。これで海外試験を受験できない外国人の方などでも、試験を受けるチャンスが広がりました。

ただし試験に合格できても、必ず在留資格が認定されるわけではありません。過去に不法滞在や不法労働などを行なっていたことがあるなど、在留状態がよくないと判断された場合には許可を受けられないケースもあります。

日本語能力試験(全分野共通)

日本語能力試験(全分野共通)

特定技能の日本語能力試験は、国際交流基金の「日本語基礎テスト」、国際交流基金と日本国債教育支援協会が運営する「日本語能力試験」の2種類があります。どの分野の特定技能でも、このどちらかの試験に合格することが必須条件です。

「日本語基礎テスト」では、2020年4月6日からインドネシアのジャカルタとバンドンで5月分の予約受付が開始されました。ただしその他の会場は、新型コロナウイルスの影響でスケジュールが未定になっています。

「日本語能力試験」でも同様に、多くの海外都市で開催が中止になっているようです。

試験内容

まず「日本語基礎テスト」では、

  • 文字と語彙
  • 会話と表現
  • 聴解
  • 読解

の4つの科目から60問出題されます。そして試験時間は60分間。基本的に生活場面で使用される会話や文字、文法などがどれだけ理解できるのかを測ります。

一方の「日本語能力試験」では、基本的な日本語を理解できているのかを判定する試験です。

試験の内容は、

  • 言語知識(文字と語彙):30分
  • 言語知識、読解(文法と読解):60分
  • 聴解:35分

の科目に分かれていて、合計で約100問ほどあります。

試験スケジュール

「日本語能力試験」の試験スケジュールについては、以下の記事内でお伝えしています。

日本語能力試験(介護分野)

日本語能力試験(介護分野)

介護分野の場合、上記の日本語能力試験に加えて「介護日本語評価試験」も受験する必要があります。特に介護分野では、利用者であるお年寄りなどとのコミュニケーションが必須となるもの。そのためこうして専門の日本語試験が設けられているのです。

こちらの試験は「介護技能評価試験」と同日に開催されます。しかし現状では新型コロナウイルスの影響により、インドネシアの一部地域以外はスケジュールが未定です。

試験内容

「介護日本語評価試験」は、問題数が全部で15問あり制限時間は30分間です。

試験の内容については、

  • 介護のことば
  • 介護の会話、声かけ
  • 介護の文書

の3科目でそれぞれ5問ずつあります。

主に介護現場で働く際に、支障のない程度の水準が求められるでしょう。合格基準は総得点の60%と以上となります。

試験スケジュール

「介護日本語評価試験」と同日。

海外での開催は、以下のサイトを参照してください(日本語訳にすると読み取れます)。

介護

介護

介護分野では、プロメトリック株式会社の「介護技能評価試験」を受験する必要があります。こちらは日本語試験と比べて、出題される範囲が広く問題数なども多いです。

試験内容

「介護技能評価試験」は問題数が学科で40問、実技が5問の全45問となります。制限時間は60分間です。

学科試験の科目では、

  • 介護の基本
  • こころとからだのしくみ
  • コミュニケーション技術
  • 生活支援技術

などが挙げられます。

実技に関しては、写真などを掲示して正しい介護手順などを理解しているかを判断する試験です。これらの試験も、総得点の60%以上を正解することが合格基準になります。

引用元 介護分野における特定技能外国人の受入れについて|厚生労働省
 介護技能評価試験介護日本語評価試験
問題数
試験時間
試験科目
全45問 60分
(学科試験:40問)
・介護の基本(10問)
・こころとからだのしくみ(6問)
・コミュニケーション技術(4問)
・生活支援技術(20問)
(実技試験:5問)
・判断等試験等の形式による実技試験課題を出題
全15問 30分
・介護のことば(5問)
・介護の会話・声かけ(5問)
・介護の文書(5問)
実施方法コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
受験手数料1,000円程度1,000円程度

試験スケジュール

新型コロナウィルスの影響で予定通り試験が行われるかどうかが確実ではないため、厚生労働省のホームページなどで随時情報を確認することをおすすめします。

海外の特定技能介護試験日程

国内の特定技能介護試験日程

ビルクリーニング

ビルクリーニング

ビルクリーニング分野では、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」が開催されます。試験については、昨今の新型コロナウイルスの影響を受け4月と5月の開催が延期になっているようです。

試験内容

「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」には、判断試験と作業試験の2種類の実技試験が実施されます。

判断試験では17問が出題され、写真やイラストなどから正しい判断を選択。作業試験では、「床面の定期清掃作業」「ガラス面の定期洗浄作業」「洋式大便器の日常清掃作業」の3つを行います。

配点は判断試験が40点、作業試験が60点となっており、合格ラインがそれぞれ60%以上の点数を取ることです。配点を見る限りでは、実際の清掃作業がどこまでできるかの判断が重要視されています。

試験スケジュール

素形材産業/産業機械製造業/電気・電子情報関連産業

素形材産業/産業機械製造業/電気・電子情報関連産業

素形材産業と産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の3分野は、共通した業務や科目があることから試験も「製造分野特定技能1号評価試験」に統一されています。これまで外国人受け入れセミナーなどは開催されていましたが、試験自体はあまり行われていません。(令和2年1月に開催)

今後の予定も現時点(2020年4月21日)では決まっていないので、経済産業省のホームページをこまめにチェックする必要があるでしょう。

試験内容

「製造分野特定技能1号評価試験」は、学科試験と実技試験に分かれています。3分野の試験が統一されているため、科目も経済産業省が指定する19試験区分と幅広いです。

その具体的な内訳は、以下のようになります。

  • 鋳造
  • 鍛造
  • ダイカスト
  • 機械加工
  • 金属プレス加工
  • 鉄工
  • 工場板金
  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理
  • 仕上げ
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 電子機器組み立て
  • 電気機器組み立て
  • プリント配線板製造
  • プラスチック成形
  • 塗装
  • 溶接
  • 工業包装

合格基準は学科が100点満点中の65点以上です。実技試験は手溶接作業と半自動溶接作業を行い、日本工業規格(JIS)の技術検定に基づいて判定。その他の試験区分については、60点以上が合格ラインです。

試験スケジュール

建設

建築

建設分野では、建設技能人材機構(JAC)の「建設分野特定技能1号評価試験」が行われます。しかし現状の開催は未定となっており、3月に国内で予定されていた「建設特定技能外国人制度の説明会」も中止となっているのが現状です。

試験内容

「建設分野特定技能1号評価試験」は、問題数30問で受験時間60分の学科試験と職種ごとに内容が異なる実技試験に分かれています。

試験範囲となるのは、型枠施工・左官・コンクリート圧送・トンネル推進工・建設機械施工・土工・屋根ふき・電気通信・鉄筋施工・鉄筋継手・内装仕上げです。

実技については作業環境を整える必要があることから、整備された国や都市から実施されます。ただし現段階では開催された実績がなく、どんな内容かは不透明です。合格ラインは学科で65%以上の正答率、実技は職種により異なります。

試験スケジュール

造船・舶用工業

造船・舶用工業

造船・舶用工業分野では、ClassNKの「造船・舶用工業分野特定技能1号試験」が実施されています。2019年11月には、実際にフィリピンで試験が開催されました。こちらの分野は、建築と同様に特定技能2号の対象業種に挙げられます。

試験内容

「造船・舶用工業分野特定技能1号試験」では、マルバツで解答する真偽選択法の学科試験と実際に溶接作業を行う実技試験の2種類があります。

学科は、問題数30問となり試験時間が60分。出題される科目は、「安全衛生一般」「溶接に関する知識や技能」となります。合格基準については、正答率60%です。

実技では9mm以上の板材に手溶接や半自動溶接、ティグ溶接などを施す作業になります。外観試験と曲げ試験を行い、割れや欠陥などがないことが合格の条件です。

試験スケジュール

自動車整備

自動車整備

自動車整備分野では、一般社団法人である日本自動車整備振興会連合会の「自動車整備分野特定技能評価試験」が開催されます。これまでフィリピンで試験が実施されており、同連合会のホームページで確認するかぎり4月以降も開催される予定です。

試験内容

「自動車整備分野特定技能評価試験」は、自動車のシャシやエンジンに関する学科試験と実技試験が設けられています。

主に学科では、

  • 構造や機能、取り扱い方に関する初等知識
  • 点検や修理、調整に関する初等知識
  • 整備用の試験機や計量器、工具の構造や機能、取り扱い方に関する初等知識
  • 材料や燃料油脂の性質、用法に関する初等知識

などの科目が範囲。問題数は30問で60分の時間制限があります。

実技では、

  • 基本的な工作
  • 分解や組み立て、簡単な点検や調整
  • 簡単な修理
  • 試験機や計量器、工具の取り扱い

の科目があり、実際の作業試験や図・イラストを用いて正しい判断をする試験が行われます。

合格の基準は学科が65%以上で、実技が60%以上です。

試験スケジュール

国外(フィリピン)試験

国内試験

航空

航空

航空分野は、日本航空技術協会の「特定技能評価試験 航空分野」が実施されます。こちらの分野では、航空機整備と空港グランドハンドリングの2種類に試験が分かれているのが特徴です。

また新型コロナウイルスの影響で、それぞれ5月と6月に開催予定だった試験が中止になっています。

試験内容

航空機整備の試験は、30問ほどの筆記試験と実技試験の2種類です。

筆記では「航空機の基本技術(締結、電気計測)」「作業安全や品質」「航空機概要」の3科目から出題。試験時間は1時間となります。

実技は、基本技術である締結や電気計測が正確に作業できるかを判定。試験時間は30分となります。合格ラインは、それぞれの試験で65%以上の正答率が求められるでしょう。

空港グランドハンドリングでも同様に、筆記と実技試験が用意されています。筆記と実技の科目もほぼ同じで、

  • ランプエリア内での安全やセキュリティ確保
  • 貨物のハンドリング
  • 手荷物のハンドリング
  • 客室内の清掃
  • 誘導作業(筆記のみ)

などです。

筆記試験では制限時間が60分で、30問ほど出題されます。実技試験では30分で10問程度となっており、筆記の方がボリュームは多いです。こちらも正答率65%以上で、合格判定になります。

試験スケジュール

航空機整備試験

2021年6月2日現在、実施の予定はありません。

空港グランドハンドリング(国内)試験

2021年5月31日に東京で実施が決定されました。最新の実施計画は、以下のURLで確認できます。

宿泊

宿泊

宿泊分野は、一般社団法人である宿泊業技能試験センターの「宿泊業技能測定試験」が行われています。令和2年度からは福岡や広島、大阪や東京などの国内の様々な地域で実施される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響ですべてのスケジュールが延期に。海外での開催も未定のようです。

試験内容

宿泊業技能測定試験で必要とされるのは、主に「フロント業務」「広報・企画」「接客」「レストランサービス業務」「安全衛生その他基礎知識」の5つの知識です。学科試験では、この科目から30問が出題されます。

実技試験においては、実際の宿泊施設スタッフになった程で、上記科目の様々な質問に答える形式です。合格ラインは、学科と実技ともに正答率65%以上となります。

試験スケジュール

開催日場所
2021年6月10日、11日(木、金)東京
2021年6月15日(火)福岡
2021年6月16日(水)大阪
2021年6月17日(木)名古屋
2021年6月22日(火)那覇

【申込期間】
2021年5月12日(水)日本時間13:00~ 5月25日(火)12:00

農業

農業

農業分野では、全国農業会議所の「農業技能測定試験」を実施しています。試験は「耕種農業」と「畜産農業」の2種類の試験に分かれているのが特徴です。

すでにフィリピンやインドネシア、カンボジアやミャンマーなどの幅広い国で海外試験も開催されています。2020年3月までは開催されていましたが、4月以降のスケジュールは未定です。

試験内容

「農業技能測定試験(耕種農業全般)」で実施されるのは、学科と実技試験です。

学科においては、

  • 耕種農業一般に関する知識
  • 安全衛生
  • 栽培作物の品種や特徴
  • 施設や資材などの栽培環境
  • 栽培方法や管理
  • 病害虫や雑草防除
  • 収穫や調整、貯蔵や出荷

の科目から出題。

実技では、これらの科目に関する質問をイラストや写真を用いて出題します。また学科と実技に加えて、日本語で農作業に関する内容の聴き取りがあります。これらの試験が合計で70問ほど出題されるでしょう。試験時間は60分です。

「農業技能測定試験(畜産農業全般)」も同様の形態で試験が行われます。学科の科目では、

  • 畜産農業一般に関する知識
  • 安全衛生
  • 品種
  • 繁殖や生理
  • 飼養管理

など。実技では、これらの科目からイラストや写真を用いた問題が出題されるでしょう。

試験の合格基準は、全国農業会議所が定めている判定基準点を超えることです。

試験スケジュール

漁業

漁業

漁業分野では、大日本水産会が手がける「漁業技能測定試験」が行われます。こちらも試験内容は漁業と養殖業の2種類です。開催時期に関しては、漁業と養殖業ともに未定となります。

試験内容

「漁業技能測定試験(漁業)」は、漁業に関する知識や安全衛生、業務で必要となる日本語能力を筆記試験で測ります。そして実技ではイラストなどから設備や道具の正しい取り扱い、漁獲物の選別に関する技能を判定するのです。

一方「漁業技能測定試験(養殖業)」は、養殖業に関する知識に重点をおいた筆記試験を実施(安全衛生や日本語能力についても同様)。実技では、イラストなどから養殖水産動植物の育成や管理、正しい取り扱いに関する技能を判断します。

合格ラインは、どちらの試験も大日本水産会が定めた適切な基準点を超えることです。

試験スケジュール

漁業

養殖業

飲食料品製造業

飲食料品製造業

飲食料品製造業は、一般社団法人である外国人食品産業技能評価機構の「特定技能1号技能測定試験」を実施しています。2020年2月の開催以降、試験についてのスケジュールが未定です。

新型コロナウイルスの影響で同機構の事務所が一時閉鎖となっていることから、他の分野と同様にしばらく試験は行われないと推測されます。

試験内容

「特定技能1号技能測定試験」の内容は、学科試験と実技試験の2種類を実施。制限時間は80分で、マークシートによるペーパーテスト方式を採用しています。

試験の科目は、

  • 食品安全や品質管理の基本的な知識
  • 一般衛生管理の基礎
  • 製造工程管理の基礎
  • HACCPによる衛生管理
  • 労働安全衛生に関する知識

です。実技では図やイラストなどで実際の業務で想定される状況を再現し、正しい行動や判断などを確認します。

また試験に合格するには、65%以上の正答率が必要です。

試験スケジュール

外食業

外食業

外食業分野も、外国人食品産業技能評価機構の「特定技能1号測定試験」を受験することで在留資格を得ることが可能です。こちらの分野では2019年度にミャンマーやカンボジア、フィリピンなどで試験が実施されていました。しかし新型コロナの影響からか、2020年度は未定となっています。

試験内容

外食業の「特定技能1号測定試験」は、他の分野と同様に学科と実技で試験が分かれておりペーパーテスト方式で実施されます。そして試験時間も80分です。

科目は、

  • 衛生管理
  • 飲食物調理
  • 接客全般

の3種類となります。またイラストを用いた実技試験や合格基準が65%以上の正答率など、科目以外は飲食料品製造業とほぼ同じ内容です。

試験スケジュール

試験日や申し込み期間などは公式サイトで随時確認を!

特定技能1号では、分野に応じて求められる技能や知識が異なります。しかし試験自体は、同じ仕組みや流れになっているものも多いです。そのため1つの分野で理解が深まれば、自然と他の分野でも応用が利きます。

そしてもっとも重要となるのが、開催される試験日や申し込み期間などです。

ただ現状では、新型コロナウイルスの世界的な流行の影響で中止や延期になっているものがほとんど。公式ホームページのスケジュールでは4月から5月の開催がなくなっているところも多いですが、実際のところいつ再開されるかも目処がついていません。

だからこそ試験が再開した際に申し込み数が満員になってしまい、すぐに在留資格が取得できない可能性も高いです。迅速に外国人労働者の受け入れを行いたい方は、各分野の試験を運営している公式サイトをこまめにチェックしてみてください。