自動車整備業界では年々、人材不足が進んでいる傾向です。そんな中、2019年に特定技能『自動車整備』分野が新設され、外国人の雇用が押し進められています。
ただし特定技能の資格を取得するには、それぞれの分野で設けられた試験に合格しなければなりません。そこで今回の記事では、特定技能『自動車整備』の概要や試験内容、申し込み方法などについて解説していきます。

特定技能『自動車整備』とは

特定技能『自動車整備』とは

特定技能『自動車整備』は、2019年4月に新設された在留資格14業種のひとつです。そもそも特定技能とは、様々な分野における人手不足を外国人雇用によって解消することを目的とした制度となります。

そして同資格は、自動車整備の分野で外国人雇用を推し進める施策。自動車整備士が行う専門的な業務を特定技能外国人で補うことが可能です。

では、特定技能『自動車整備』における具体的な仕事内容についてご紹介していきます。

特定技能『自動車整備』の仕事内容

特定技能『自動車整備』では、主に自動車の日常点検整備や定期点検整備、分解整備の業務が可能です。それに加え、顧客への整備内容の説明や部品の販売、施設内の清掃といった日本人スタッフが行う関連業務にも就けます。

車を所有している方ならオイル交換や1年点検、車検などで整備工場やディーラーに足を運んだことがあるはずです。その際に車の整備や解体、洗浄などを行なっている整備士などがイメージすると分かりやすいでしょう。

そして特定技能『自動車整備』では、特定技能1号のみ取得できることになっているため、働ける期間は最大5年です。ただし、技能実習で雇用している外国人の方が特定技能に移行することで、最大10年間の雇用を実現できます。

自動車整備分野は特定技能1号のみ

特定技能には、特定技能1号と特定技能2号の2種類があり、それぞれ求められる技能や日本語能力の水準などが異なる仕組みです。

例えば特定技能1号は、ある程度の水準に達していれば認められるものの、特定技能2号はより熟練した技能や日本語能力が求められます。その分、特定技能2号は日本での永住や家族の同伴が認められており、企業側としても長く労働力を確保できるのです。

しかし特定技能2号の取得は、一部の分野のみ(建設業、造船・舶用工業)に限られているのが現状です。そのため、自動車整備の分野では1号のみしか取得できません。特定技能を取得しても家族との帯同は認められておらず、雇用期間も最大で5年間となります。

特定技能「自動車整備」労働者分布図

特定技能『自動車整備』試験内容

特定技能『自動車整備』試験内容

特定技能『自動車整備』では、同分野の専門的な技能を確認する「自動車整備分野特定技能評価試験」を受ける必要があります。同試験を運営しているのは、一般社団法人「日本自動車整備振興会連合会」です。

そして試験は学科と実技の2つに分かれており、それぞれで合格水準を満たさなければ特定技能を取得することはできません。もちろん他の分野と同様に「日本語基礎テスト」、もしくは「日本語能力試験」の受験も必須事項です。

技能試験では、コンピュータを利用して出題や回答を行うCBT方式を採用しています。受験者同士の接触を抑え、少人数での開催が可能なことから、新型コロナウイルスの感染拡大の防止にも有効な方法と言えるでしょう。

実施場所については、日本とフィリピンのみとなっているのが現状。どちらの地域でも、基本的に平日の開催が多いようです。詳しくは日本自動車整備振興会連合会の試験実施情報をご参照ください。

また試験を受ける際には日本円で4,300円、フィリピンで2,000PHPの受験料が掛かります。さらに合格証明書の交付手数料にも16,000円が必要になるため、忘れないよう注意してください。

学科試験

自動車整備分野の学科試験では、車のシャシやエンジンに関する知識・法律、整備に使用する機器の取り扱いなどの範囲から問題が出題されます。

試験に使われる言語は日本語です。ただし漢字にルビが振られ、カタカナの専門用語に英単語が併記されるなどの配慮もされています。

そして具体的な科目は、以下の通りです。

  • 構造や機能、取扱法に関する初等知識
  • 点検や修理、調整に関する初等知識
  • 整備用の試験機や計量器、工具の構造や取扱法に関する初等知識
  • 材料や燃料油脂の性質および用法に関する初等知識

基本的に試験問題は、上記の範囲から出題された問題が正しいか間違っているかを選択する真偽法(○×式)になります。例えば「図で表している器具の名前は、〜である」「ブレーキ液は指定された期間ごとに交換する」などです。

試験問題についてより詳しく知りたい方は、上記の日本自動車整備振興会連合会のWebサイトに掲載された例題をご参照ください。

自動車整備に関する知識に加え、簡単な日本語の読み書きができれば、比較的答えやすい内容になっています。

実技試験

実技試験は、主に図・イラストなどを用いて作業中の状況を想定した問題が出題されます。そして回答がいくつか用意されており、正しい操作方法や注意点などを選択するという形式です。

科目としては、

  • 簡単な基本工作
  • 分解や組立て、簡単な点検や調整
  • 簡単な修理
  • 簡単な整備用の試験機や計量器、工具の取扱い

となります。

例えば、「部品を取り外す際の正しい注意点はどちらか」「ボルトを締める正しい順番はどれか」などの問題が挙げられます。実技試験の問題例についても、日本自動車整備振興会連合会のWebサイトをご参照ください。

同試験では、自動車整備に関する様々な状況設定の問題が用意されています。実際に作業をするわけではないものの、受験者は現場で即戦力となる技能を持っていることが試されるでしょう。

問題数と試験時間

学科試験では問題数が30問、制限時間が60分です。2分に1問のペースで解いていけば間に合うため、日本語の問題文がスムーズに読めるなら問題なくこなせるでしょう。

一方で実技試験は、3つの課題に複数の問題が設けられ、制限時間は20分です。学科に比べてひとつの問題に掛けられる時間が短いため、少し忙しく感じるかもしれません。

合否の基準

技能試験における合否の基準は、学科と実技でそれぞれ異なります。具体的には、学科試験が65%以上の正解率、実技試験は60%以上です。

これらの試験は日常点検や定期点検、分解整備などに対応できるかを測ることが目的。試験に合格できれば、自動車整備分野に関する一定の知識や技能を持っていることが認められるでしょう。

特定技能『自動車整備』試験日程

特定技能『自動車整備』試験日程

試験の日程は変更・中止の可能性もあります。日本自動車整備振興会連合会のサイトで最新の情報をご確認ください。

【国内】特定技能『自動車整備』試験日程

【海外(フィリピン)】特定技能『自動車整備』試験日程

特定技能『自動車整備』試験の申し込み方法

特定技能『自動車整備』試験の申し込み方法

特定技能『自動車整備』の試験を受けるには、プロメトリック株式会社の予約サイトから申し込みを行わなければなりません。まずはその準備として、プロメトリックIDの登録が必要です。

IDの登録では受験者の名前や電話番号、住所などを入力します。ミスのないよう確認しながら進めてください。

そして登録したIDで同サイトへログインすると、試験の申し込みができます。Webサイトの案内に従いながら、受験する分野の試験や日時、会場などを選択しましょう。

受験料の支払い方法については、クレジットカードまたはバウチャーを利用することが可能です。個人で受験する場合はクレジットカードで問題ありませんが、企業や団体などが受験料を建て替える場合には、バウチャーを選択します。

具体的には、バウチャーエクスプレスで購入したバウチャーナンバーと有効期限を受験者に配布。受験者は、それらの情報を入力し支払い完了となります。

そして予約が完了すると、試験の日時や会場などが記載された確認書が発行されます。試験当日はこの確認書を持参する必要があるため、忘れないよう印刷しておく必要があるでしょう。

特定技能試験についての理解を深め、自動車整備士の人材確保につなげる

自動車整備業界は、若者の自動車離れや仕事の多様化などの様々な理由で人材不足が著しくなっています。例えば、2017年の自動車整備分野における有効求人倍率が3.73に高まるなど、企業の採用枠に対して求職者が少なくなっている傾向です。

企業が十分な人材を確保するためには、外国人の採用を積極的に推し進める必要があるでしょう。そこで注目を集めているのが、特定技能『自動車整備』の在留資格となります。

ただ特定技能を取得するには、各分野の技能試験や日本語試験に合格することが必須です。留学生など日本在住の外国人を雇用する場合には、企業のサポートなども欠かせません。

自動車整備士の人材確保につなげるために、企業側も特定技能の試験について理解を深めておく必要があるでしょう。