特定技能のビルクリーニング分野は、外国人の方が日本でビルなどの清掃業務で働くために必要な在留資格です。でも実際にどんな内容の仕事に就けるのか、資格を取得する条件などはあるかという疑問をもつ方もいるでしょう。そこで今回は特定技能『ビルクリーニング』の概要から、試験の内容や日程、受入れ機関となる条件などについて詳しく解説していきます。

特定技能『ビルクリーニング』とは

特定技能のビルクリーニング分野は、住宅を除いた大勢の利用者がいる建築物(ビルなど)を対象に内部の清掃を行うための在留資格です。

一言で清掃といってもその目的は様々で、

  • 衛生的環境の保護
  • 美観の維持
  • 安全の確保や保全の向上

などが挙げられます。

つまり建築内の清潔感を保つことや美しい見た目を維持すること、設備などの老朽化を防ぐ役割を果たす仕事です。業務を遂行するためには様々な掃除用具や手段を用いて、建築内に存在する汚染物質の排除などを行います。

特定技能『ビルクリーニング』では、直接雇用でしか外国人を雇うことができません。一部の特定技能分野で可能な派遣などの労働契約は認められていないのです。

そして特定技能は、即戦力となる外国人を雇用することを目的として導入された制度。そのためビルクリーニングの在留資格を取得するには、対象となる分野に関する技能や日本語能力がある程度の水準に達している必要があります。

そこで外国人の能力を判断する方法として、いくつかの試験が用意されているのです。試験に合格しなければ、在留資格を得ることはできません。では具体的な試験の内容について見ていきましょう。

特定技能『ビルクリーニング』試験日程と試験内容

特定技能『ビルクリーニング』分野では、技能評価試験と日本語能力試験に合格することで在留資格を取得できます。

日本語試験に関しては、他の分野と共通の内容です。具体的には「日本語能力試験」と「日本語基礎テスト」の2種類あるうち、どちらかの試験で設定されたレベル以上の評価を得る必要があります。

そして技能評価試験は、主にビルクリーニングに関する知識や技能を測るもの。公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が運営している「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」で判定されます。ただし他の分野にあるような学科試験はなく、実技試験のみの実施となります。

またビルクリーニング職種の技能実習2号を修了している外国人の方は、この技能評価試験や日本語試験を免除することが可能です。技能実習では事前の試験がなく、在留資格を取得するハードルが低いです。そのため一般的には、技能実習を修了した後に特定技能へ移行する流れとなるでしょう。

『ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験』試験日程

引用元 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 国内試験 受験案内(PDF資料)
試験会場定員数試験日程
北海道会場50名2021年5月19日(水)
宮城会場50名2021年4月23日(金)
東京会場300名2021年4月27日(火)
2021年4月28日(水)
2021年5月11日(火)
2021年5月12日(水)
愛知会場50名2021年4月13日(火)
2021年4月14日(水)
2021年4月15日(木)
大阪会場100名2021年4月26日(月)
2021年4月27日(火)
2021年4月28日(水)
広島会場50名2021年4月26日(月)
2021年4月27日(火)
徳島会場50名2021年4月14日(水)
2021年4月15日(木)
2021年4月16日(金)
福岡会場50名2021年4月20日(火)

申込期間や受験方法など詳しい内容については、公式サイトを参照してください。

試験を受けるのに条件はある?

ビルクリーニング分野の受験資格は、まず試験日の時点で17歳以上であることが条件です。そして国内試験を受ける際には、きちんとした在留資格を得て入国している必要があります。

もし不法滞在などが判明した場合、試験に合格した後でも取り消しになる可能性が高いので注意してください。その他にも、法務大臣が告示で定める外国政府などが発行している旅券を持っていることが条件です。

また技能試験に合格しても日本語試験で水準を満たしていなければ、在留資格を取得することはできません。そして必然的に日本語能力でも特定技能で求められるレベルに達していることが条件となるでしょう。具体的には「日本語能力試験」ではN4以上、「日本語基礎テスト」だとA2以上です。

これまで特定技能全般での受験資格には、3ヶ月以上の中長期滞在を経験したことがある人や現在進行形で中長期在留の方しか受験資格がありませんでした。しかし令和2年4月1日以降はその条件が拡大し、「短期滞在」などの在留資格でも試験を受けられるようになっています。

受験申し込みに必要な書類

ビルクリーニング分野の技能試験を受験する際には、Webでの申し込み時にいくつかの書類が必要になります。具体的には、

  • 3ヶ月以内に撮影した顔写真
  • 在留カード

などです。

顔写真は帽子やマスクなどを着用していないことや正面を向いていること、背景がないことなどが必須事項となります。そのため証明写真で撮影したものをアップロードするのが、比較的簡単に済ませられるはずです。

在留カードでは、顔写真がある面を撮影したデータをアップロードします。その際には、必ずページ全体が鮮明に写っていることが重要です。カードの撮影は、カメラで撮りJPEGやPNGファイルで保存する、コピー機やアプリなどでスキャンしてPDFファイルとして保存する、などの方法があります。

その他にもWebの申し込み画面で氏名や生年月日、国籍や緊急連絡先などを入力することも必要になるでしょう。

『ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験』の試験内容

ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、実技試験のみが実施されます。具体的には、判断試験と作業試験の2種類です。

判断試験では、

  • 床面の定期清掃作業(ドライバフ)
  • ガラス面の定期洗浄作業
  • 洋式大便器の日常清掃作業

といった科目の中から17問ほどが出題されます。制限時間は20分です。

作業試験においては、判断試験と同様の科目の中から一部の作業を実演します。例えば床面の定期清掃作業では、用意された塩化ビニル系の床材に対してダストクロス型のモップを使用し清掃を実施。

ガラス面の定期洗浄作業では、1m四方のガラス面をシャンパーや窓用スクイジーといった専用の道具、タオルなどを用いて拭きます。

洋式大便器の日常清掃作業では、用意された災害用洋式大便器をトイレ用のスポンジやクロス、タオルなどで綺麗に仕上げることになるでしょう。いずれの作業も、使用した資材や用具を元の位置に戻すなどの細かいポイントまで判断されます。

そして作業試験には、標準時間10分と制限時間12分が設けられています。標準時間を超えると減点されてしまい、制限時間を過ぎると失格になるので注意が必要です。

試験対策・教材はある?

試験対策としては、ビルクリーニング外国人材受入支援センターから訓練用のDVDが用意されています。価格は10,000円〜15,000円ほど。全国ビルメンテナンス協会の会員になっていると、少し安く購入できます。

その他にも参考書などが販売されていますが、基本的には日本人向けとなります。ただイラストなどが多く視覚的にも分かりやすいため、外国人の方でも学習しやすい内容となっているようです。

また技能試験の運営を実施している全国ビルメンテナンス協会のサイトでも、日本語の過去問題が配布されています。判断試験の参考にしてください。

試験の配点方法

引用元 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験実施要領(PDF資料)|厚生労働省
課題名配点基準点合否基準
判断試験(ペーパー試験)4024判断試験の点数が満点の60%以上、かつ作業試験(作業1・2・3)の点数が満点の60%以上
作業試験
 作業1:床面の定期清掃作業
 作業2:ガラス面の定期洗浄作業
 作業3:様式大便器の日常清掃作業
6036
合計10060

合否と合格証明書

試験の合否は、試験後1ヶ月ほどで全国ビルメンテナンス協会のWebサイトに合格者の受験番号が公表されます。さらに受験者全員にも、合否の通知書がメールなどで送付されるでしょう。

合格が確認できた後は、合格証明書の発行が必要になります。受入れ機関などは、外国人の方から「受験票」または「合格通知メール」をもらい発行申請を行いましょう。

具体的には、

  • ビルメンテナンス協会のサイトから「合格証明書申請フォーマット」をダウンロード
  • 合格者情報や企業情報などの必要事項を記入
  • 同協会のメールアドレスに記入したエクセルデータを送付

という流れです。

申請が受理された場合は、「払込連絡票」が添付された受付完了メールが送られてきます。その払込連絡票に記載された内容に従って、14,300円(税込)の発行手数料を納付しましょう。

そして手数料の支払いが確認されると、合格証明書が発行されます。納付から発行までには約1〜2週間ほどかかるため、速やかに手続きを済ませた方がスケジュール調整もしやすいです。

また受験申請書の内容に偽りがあったり不正などが発覚したりすると、合格取り消しになることもあるので注意してください。

特定技能『ビルクリーニング』受入れ機関の条件

特定技能のビルクリーニング分野では、外国人の受入れ機関となるためにいくつかの条件を満たさなければなりません。

まず外国人の受入れ機関となる企業は、建築物における衛生的環境の確保に関する法律に規定された「建築物清掃業」、もしくは同項目の第8条に規定された「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けている事業であること。

次に「ビルクリーニング分野特定技能協議会」の構成員になっていることです。そして同協議会に対しては、必要な協力を行わなければなりません。初めて外国人を受入れる企業の場合には、受入れ日から4ヶ月以内に構成員となる必要があります。

また外国人の受入れに関して、厚生労働大臣が実施する調査や指導、情報の収集や意見の聴取などの業務に対しても協力することが条件です。

特定技能『ビルクリーニング』の在留資格を取得した外国人を受入れるには、これらの要件を全て満たすことが必要になります。

ビルクリーニング分野の外国人を受入れるためにも、試験や手続きについて理解を深めよう

これまでビルクリーニング分野の職種で外国人を受入れるには、技能実習で日本に訪れる方のみが雇用できました。しかし現在では、特定技能においても外国人の採用が可能となります。

特定技能が導入されたことで、ビルクリーニング業では企業の人材確保が以前よりも容易になりました。そして技能実習で雇用している外国人を特定技能に移行することで、さらに長く雇うことも可能になっています。

ただしビルクリーニング分野の在留資格は、技能試験や日本語試験に合格しなければ取得することができません。それに申請手続きなどが複雑ですし、試験対策となる教材も充実しているとは言えないので、受入れ機関によるサポートが必須となります。

外国人の受入れを検討している企業の方は、ぜひこの機会に特定技能『ビルクリーニング』についての知識を深めておきましょう。