外国人が日本へ入国するためには、ビザや在留資格といったものを取得しなければなりません。しかしこの2つは、似ているようで違う効力をもっています。
特に外国人を雇用する企業は、ビザや在留資格の申請などを本人に代わって行うこともあるため、正しく理解しておく必要があるでしょう。そこで今回の記事では、ビザと在留資格の違いや日本に入国する際の流れについて詳しく解説していきます。

そもそもビザ(査証)って何?

そもそもビザ(査証)って何?

ビザとは、他の国への入国を推薦するための書類のことです。事前に外国人の方が日本へ入国できるかの審査を行い、特に問題ないと判断された人にビザが発行されます。

ただしあくまで入国前の段階での話なので、ビザがあれば必ず入国できるというわけではありません。ビザは入国の資格があるという証明になるものの、最終的には日本へ上陸した際の審査に通ることが重要です。

また短期滞在の場合には、ビザの免除措置を受けている国もあります。対象となる国や地域に住んでいる方は、観光や知人を訪問するなどの理由があれば日本へ入国する際にビザを取得する必要がありません。

国によって滞在できる期間が定められており、

インドネシアやタイ、ブルネイ15日
アラブ首長国連邦30日
その他の国90日

となります。

そして2020年5月時点では、68の国がビザ免除措置の対象です。詳しくは外務省の公式サイトをご参照ください。

ビザ免除措置について詳しくはこちら

これらのことからわかるように、ビザは入国に関する手続きに有効なものなので、日本で働く許可を得られる訳ではありません。就労目的で日本に訪れる外国人の方は、ビザとは別に在留資格を得る必要があります。

在留資格との違い

在留資格とは、外国人の入国や在留についての管理を行う制度です。主に日本に訪れた外国人の活動範囲を示すものと言えるでしょう。

例えば「日本で働きたい」「長期的な観光を日本で行いたい」など日本に訪れる理由は、外国人の方によって様々です。その目的や内容に応じて、在留資格の種類も数多く存在しています。

つまりビザと最も違う点は、日本で一定の活動を許可しているところ。在留資格があれば、外国人の方は認められた活動を行うことができるのです。例えば日本での仕事が認められている「特定技能」「技能実習」などがあると、その分野に応じた仕事に就くことができるでしょう。

在留資格の種類については、パスポートの「上陸許可証印」シールに表記されています。

また一方で許可された活動を実施していない場合は、在留資格が失われることもあるでしょう。外国人の方が許可されていない活動を行なったり仕事に就きたいときにも、在留資格の変更を届出しなければなりません。

在留カードとの違い

在留カードとは、日本で3ヶ月以上の滞在を行う中長期在留者に交付される証明証書のようなものです。カードには持ち主の名前や生年月日から、在留資格の種類や期間などの情報が記されています。

どんな仕事に就けるかといった「就労制限の有無」、働く目的で訪れていない方でもバイトなどが許可される「資格外活動許可」も記載されているため、在留カードを見れば日本で仕事ができる外国人なのかも一目瞭然です。

偽造防止を目的としたICチップも搭載されているので、日本に住んでいる外国人の身分を証明するものと言えるでしょう。そのため外国人の方は、在留カードの常時携帯が義務付けられています

そしてビザが入国時に効力を発揮するのに対し、在留カードは日本国内に入ってから取得して活用するものです。在留資格を取得して日本に3ヶ月以上滞在するのであれば、自然と手続きなど行い在留カードを入手することになります。

日本入国までの流れ

日本入国までの流れ

外国人の方が日本に入国するためには、いくつかの申請を行い審査に通る必要があります。ある程度の期間を要する手続きなどもあるため、事前にしっかりと理解しておかないとスケジュールに支障が出ることもあるでしょう。

ではどんな流れで入国することになるのか、具体的に解説していきます。

1.在留資格認定証明書交付申請

在留資格認定証明書とは、外国人が日本へ上陸するための条件を満たしていることを審査し、問題ない場合に発行されるものです。そして日本に入国するためには、観光などの短期滞在を除いて最初にこの在留資格認定証明書の交付を行う必要があります。

在留資格認定証明書は交付される本人だけでなく、外国人を受け入れる機関などが申請を行うことも可能です。特に社員として採用した方や日本語学校への入学が決まった外国人を呼び寄せる際には、最も一般的な方法と言えるでしょう。

そして申請するには、日本での活動内容に応じた書類を日本の入国管理局に提出します。具体的には、「在留資格認定証明書交付申請書」「身元保証書」「質問書」などです。

これらの書類を提出し交付が認められると、申請を行なった本人または代理人となる機関にA5サイズ程度の在留資格認定書が送られます。

2.在留資格認定証明書を提示してビザ申請

在留資格認定書を受け取った外国人の方は、証明書やその他の必要書類を持って海外の現地にある日本大使館や領事館へビザの申請を行います。必要書類については、各国の大使館や領事館のHPなどで確認してください。

そしてビザ申請まで行うには証明書の審査期間などを含めると約1〜2ヶ月程度、場合によっては半年待つこともあるでしょう。

また在留資格認定証明書は、有効期限が3ヶ月です。外国人本人のスケジュール調整やビザの申請などで時間がかかるため、計画的に物事を進めないと証明書が失効してしまう恐れもあります。

3.ビザ発給

各国の大使館などでビザ申請を行うと数日から1、2週間の審査期間があり、その後にビザが発給されます。ビザの審査には日本と海外にある複数の役所を通る必要があるため、ある程度の期間がかかるのです。

もちろん途中で書類に記入ミスなどが見つかれば、再度手続きしたりと面倒な手間が増えるため、不備がないようしっかり確認してから提出することが重要になるでしょう。

また在留資格認定証明書があると、すでに日本で活動する目的や内容が法務大臣に認められているのと同じ扱いになります。そのためスムーズなビザ発給につながりやすいでしょう。

4.日本入国

日本への入国では、上陸した空港や海港において最終的な審査を受けます。そのときに行うのが旅券やビザの提示、在留資格認定証明書の提出です。在留資格認定証明書は入国時に役目を終えるため、ここで入国管理局に回収されます。

審査では、その他にも指紋採取や顔写真撮影などが実施されるでしょう。そして上陸が問題なく許可されれば、在留資格を得てパスポートに上陸許可証印が張り付けられます。

こちらでも在留資格認定証明書があれば、上陸する条件を満たしていることになるためスムーズに入国審査を通過することが可能です。

また成田や羽田などの一部の空港では、その場で身分を証明する在留カードが交付されます。その他の空港などで入国審査を受けた場合、入国後に届け出た住所あてへ後日在留カードが郵送されることになるでしょう。

ビザ(査証)発給には在留資格が必要

外国人の出生や状況にもよりますが、基本的に日本へ入国するには滞在するための明確な理由が必要になります。そのため訪れる目的が曖昧だったり、職種にマッチした人材ではないと判断されれば却下されるケースもあるのです。

例えば「国際貿易について学んできた知識を活かしたい」と主張しているのに、商社や貿易会社ではなくレストランや製造工場などに採用された場合、本人の能力が活用される可能性は低いです。これが結果として入国が却下されてしまう原因になります。

しかし在留資格を取得していれば、すでに日本である程度の活動が認められていることになるため、外国人を入国させても上記のような矛盾が発生しません。入国後も問題なく活動できる証明になるので、ビザの発給に在留資格が必要不可欠なのです。

在留資格の変更はできる?

在留資格の変更はできる?

在留資格を取得した外国人の方が日本に訪れる目的や活動内容を変えたいといったときには、「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。

例えば、留学で訪れている大学生がそのまま日本で就職する際や違う職種で働く場合など。さらにビザの免除措置を受けている国だと、在留資格認定証明書が交付される前に外国人の方が早まって短期滞在で訪れてしまうケースも挙げられます。

そしてすでに入国している外国人の場合は、在留資格の変更許可申請を行うことで日本に滞在したまま資格を変更することが可能です。手続きには申請書や写真、日本での活動に応じた書類などを提出します。

詳しい書類や申請方法については、法務省の公式HPを参照してください。

申請方法などの詳細についてはこちら

この申請では一般的に2週間から1、2ヶ月ほどの審査期間を要します。変更したいからといってすぐに実施できるわけではないので、雇用の際には企業側と外国人側のスケジュール調整が必要になるでしょう。

外国人雇用は「どんな理由で日本に入国しているか」をよく確認

ビザ(査証)は入国時にのみ効力を発揮するものなので、外国人の方が日本で就職する際の証明にはなりません。外国人を雇用する際には、職種に応じた在留資格を取得しなければならないため、その点を間違えないように注意しましょう。

また「文化活動」「留学」「家族滞在」「特定活動」などの在留資格では、基本的に日本で働くことは認められていません。もしこれらの資格をもった外国人が働く場合には、「資格外活動」の許可を受ける必要があります。

外国人の雇用では、その方がどんな目的で訪れていてどのような技能を習得しているかを確認することが重要です。外国人を不当に雇わないよう気をつけるためにも、ビザや在留資格についてしっかりと理解を深めておきましょう。