外国人の方が日本で滞在するには在留資格が必要です。ただしその資格の中には、日本で働くことが認められていないものもあります。
外国人を雇用する際に最も気をつけなければならないのは、就労が認められていない在留資格をもつ人を採用すること。もし不法就労に問われてしまうと、事業主が罰則を課せられることになるからです。
そこで今回は、就労が認められている在留資格の種類や外国人雇用の届出などについて詳しく解説していきます。

在留資格とは

在留資格とは

日本では入管法という法律が定められており、出入国するすべての人の公正な管理を図っています。特に外国人には様々な種類の在留資格を与えることで、ある程度の活動範囲を認めているのです。

つまりこの資格がないと、外国籍の方が日本で観光したり仕事をしたりするなどの活動はできません。そして在留資格によっては滞在期間も定められており、その期間以上滞在していると不法滞在と見なされることもあるのです。

では具体的にどんな在留資格があるのか詳しく解説していきます。

就労が認められる在留資格(活動制限あり)

外国人の方が日本で働くためには、その活動が認められている在留資格を取得する必要があります。ただし日本国籍をもつ人と違って、日本で自由に仕事を選んだり転職できるわけではありません。それぞれの資格ごとに、活動の制限が設けられているのです。

そして就労が求められる在留資格は以下の通りです。

在留資格該当例
外交外国政府の大使,公使等及びその家族
公用外国政府等の公務に従事する者及びその家族
教授大学教授等
芸術作曲家,画家,作家等
宗教外国の宗教団体から派遣される宣教師等
報道外国の報道機関の記者,カメラマン等
高度専門職ポイント制による高度人材
経営・管理企業等の経営者,管理者等
法律・会計業務弁護士,公認会計士等
医療医師,歯科医師,看護師等
研究政府関係機関や企業等の研究者等
教育高等学校,中学校等の語学教師等
技術・人文知識・
国際業務
機械工学等の技術者等,通訳,デザイナー,語学講師等
企業内転勤外国の事務所からの転勤者
介護介護福祉士
興行俳優,歌手,プロスポーツ選手等
技能外国料理の調理師,スポーツ指導者等
特定技能(注1)特定産業分野(注2)の各業務従事者
技能実習技能実習生

(注1)平成31年4月1日から
(注2)介護,ビルクリーニング,素形材産業,産業機械製造業,電気・電子情報関係産業,建設,造船・舶用工業,自動車整備,航空,宿泊,農業,漁業,飲食料品製造業,外食業
(平成30年12月25日閣議決定)

これらの在留資格では、原則としてそれぞれの分野に応じた仕事に就くことが可能です。ただし技能実習では基本的に転職が認められていないなど、在留資格によって細かい制限や活動範囲が異なります。

身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)

在留資格の中には、自由に職種を選んで働けるものもあります。具体的には以下の通りです。

在留資格該当例
永住者永住許可を受けた者
日本人の配偶者等日本人の配偶者・実子・特別養子
永住者の配偶者等永住者・特別永住者の配偶者,我が国で出生し引き続き在留している実子
定住者日系3世,外国人配偶者の連れ子等

永住者とは、日本で永住することの許可を得ている外国人のこと。一般の方が取得するには、「10年以上日本に在留していること」「そのうち5年以上を就労や居住の在留資格で過ごしていること」などの条件を満たす必要があります。

また永住権の申請ができても、過去に転職の届け出を行なっていなかったり、税金を納めていなかったりする場合には許可を得るのが困難です。そうした厳しい条件をクリアすることで、日本での活動制限に縛られることなく仕事に就けます。

ただし永住権の取得には例外も存在しており、「高度人材外国人として認められれば3年」「日本人と国際結婚をしている場合には3年」などの短期間で獲得することが可能です。

定住者については、法務大臣が特別な理由を考慮して永住を認めているケースや法務省の告示であらかじめ定めている外国人などが該当します。例えば日系2世や3世、タイやマレーシアに滞在しているミャンマー難民などです。

これらの在留資格は、日本と結びつきの強い身分や日本である程度の地位を持つ外国人が取得できるものです。そのため基本的にはどんな職種でも働けますし、他の在留資格で制限されていることの多い単純労働に就くことも可能となります。

就労の可否は指定される活動によるもの

外国人が日本で働ける職種は、数多く存在しています。しかし年々、労働環境は多様化しており、すべての活動を在留資格の対象にするのは困難です。

そこで上記で定められた職種や業種に該当しない仕事については、法務大臣が個々に認定しています。こうした仕事の内容によって外国人が働けるかどうかを判断しているのが「特定活動」という在留資格です。

働くことができる仕事の具体例としては、

  • 外交官や領事館などの家事使用人
  • アマチュアスポーツ選手
  • 外国人大学生のインターンシップ
  • ワーキングホリデー

などが挙げられます。

働ける期間は特定活動の内容によって異なり、最長でも5年間です。例えばワーキングホリデーやインターンシップなら1年間の在留となります。

就労が認められない在留資格

上記の在留資格とは逆に、日本で働くことができないものもあります。具体的には以下の通りです。

在留資格該当例
文化活動日本文化の研究者等
短期滞在観光客,会議参加者等
留学大学,専門学校,日本語学校等の学生
研修研修生
家族滞在就労資格等で在留する外国人の配偶者,子

これらの在留資格は働く目的以外で日本に来日しているため、基本的に滞在しか認められていません。しかし中には例外も存在していて、「資格外活動」の許可を得ることで働けます。

例えばスーパーや飲食店などでアルバイトをしている外国人留学生の方を見かけたことがある人も多いでしょう。それらの外国人は、きちんと資格外活動の許可を受けているのです。

ただし「資格外活動」では、もともとの活動内容を阻害しないという条件があるため、他の在留資格よりも活動範囲が狭いです。

具体的には、

  • 留学や家族滞在の場合、原則として1週間に28時間まで
  • 留学生が在籍している大学などが長期休暇(夏休みなど)の場合、1日8時間まで可能

となります。

そのため企業が外国人留学生などのアルバイトで雇う場合、資格外活動の許可を受けていることの確認や労働時間に注意する必要があるでしょう。もしこれらの内容が守られていないと、雇用主も不法就労助長罪に問われて「3年以下の懲役」「300万円以下の罰金」といった処罰の対象になります。

在留カードを持っていない場合は原則就労できない

在留カードを持っていない場合は原則就労できない

上記のことから在留カードを持っていない外国人は、原則として日本で働くことができません。なぜなら在留カードは、観光や3ヶ月以下の滞在などで来日している外国人には交付されないからです。

例えば、

  • 3ヶ月以下の在留期間の人
  • 「短期滞在」の在留資格で入国する人
  • 外交と公用の在留資格を取得する人
  • 特別永住者

などは在留カードが交付されません。

そして在留カードには「就労制限の有無」が記載されているので、日本で働けるかどうかを確認できるのも大きなポイント。企業などは採用する際にこの項目を確認するため、正しく雇用できるか分からない外国人を雇うことはほとんどないのです。

在留カードを所持していなくても就労できるケース

在留カードを持っていない外国人の中でも、理由によっては日本で働けるケースが存在します。まず外交や公用の在留資格ではそもそもが就労目的なので、カードを所持していなくても対象となる職種で働くことが可能です。

また一部の空港では、中長期の在留者でも入国時に在留カードが交付されないことも。その場合、旅券に上陸許可の証印を押すだけでなく「在留カードを後日交付する」という内容が記載されます。

つまり働くことができる在留資格をもっていても、住居地の市区町村に届け出をするまでは在留カードがない場合もあるのです。

そして上記でも述べたように、在留カードの交付がない短期滞在などの在留資格の場合でも「資格外活動」の許可を受けることで働けるようになります。

資格外活動の許可申請については、法務省の公式サイトをご覧ください。

資格外活動の許可申請についての詳細はこちら

ハローワークへの届出の義務

東京ハローワーク
引用元 東京ハローワーク

外国人労働者を雇用する際には、事業主がハローワークを通して厚生労働大臣に届け出をする必要があります。しかし、意外とこの事実を知らない方も多いのが現状です。

万が一届け出を怠った場合には、30万円以下の罰金を課されてしまうことがあるため注意してください。では具体的な概要や対象となる外国人について見ていきましょう。

外国人の雇用状況を適切に届け出る義務がある

日本では2007年10月から、外国人を雇用する際などにすべての事業主に届出をすることが義務づけられました。これは雇用対策法に基づいた事項であり、必ず行わなければなりません。

届出する内容は、主に採用した外国人労働者に関することです。具体的には、

  • 氏名や性別、生年月日
  • 国籍や地域
  • 在留資格の種類や在留期間
  • 資格外活動許可の有無
  • 雇入れする事業所の名称や所在地など

などが挙げられます。

また外国人が雇用保険に加入するか否かで、申請する書類が異なります。詳しくは以下の「届出の方法」をご参照ください。

届出の対象となる外国人

届出の対象となるのは基本的に正社員や派遣社員、アルバイトなどのすべての外国人労働者です。

そして派遣社員の場合には、雇用主となる派遣元の企業に届出の義務が発生します。登録型派遣だと、外国人と雇用関係を結ぶ企業がその都度雇入れの届出を行うことになるでしょう。

ただし一部例外もあり「外交」「公用」の就労資格、在日朝鮮人や韓国人などが取得できる「特別永住者」の在留資格では届出する必要がありません。

届出の方法

外国人雇用の届出を行うには、事業所の管轄であるハローワークに申請書類を提出する必要があります。ここで注意したいのが、採用する外国人が雇用保険に加入するか否かで書類が変わることです。

具体的には、

  • 雇用保険に加入する方は「雇用保険被保険者資格取得届」
  • 雇用保険に加入している外国人労働者が離職する場合には「雇用保険被保険者資格喪失届」
  • 雇用保険に加入しない方は「外国人雇用状況届出書」

などがあります。

書類の様式については、厚生労働省のサイトをご覧ください。

書類の様式についての詳細はこちら

書類に記入する在留資格の種類や在留期限などの細かい事項は、ほとんどが在留カードに記載されているものです。令和2年3月1日以降は在留カード番号も必要となるため、外国人の方に確認しきちんと正しい内容を記入しましょう。

提出期限については、

「雇用保険被保険者資格取得届」雇入れの翌月10日まで
「雇用保険被保険者資格喪失届」離職の翌日から10日以内
「外国人雇用状況届出書」雇入れや離職のどちらも翌月の末日まで

となります。

また現在では、これらの届出をオンライン申請で済ませることが可能です。詳しくは厚生労働省のサイトから確認してください。

オンライン申請の詳細はこちら

離職の際にもハローワークへの届出が必須

外国人労働者に関する届出は、雇用するときだけでなく離職する際にも義務付けられています。書類については雇用保険加入者が「雇用保険被保険者資格喪失届」、雇用保険に未加入だと「外国人雇用状況届出書」を提出しなければなりません。

外国人を雇用する際の届出を知らない人が多いように、離職の届出についても知らない方がいます。何度も言いますが届出を忘れたり嘘の内容を申告した場合、処罰の対象となるため必ず届出を行なってください

外国人を雇用するためにも、正しい在留資格の知識をもとう!

在留資格には多数の種類があり、日本で働くことができるもの・できないものなど様々です。特に日本での仕事が原則認められていない「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」の在留資格の場合、資格外活動の許可を受けているか必ず確認しましょう。

日本では企業の人手不足を解消するために、2020年から「特定技能」の在留資格を設けたりと外国人労働者の枠は広がってきています。もし外国人の雇用を検討しているなら、スムーズな採用の実現や不法就労にならないためにも、在留資格についての正しい知識をもつことが重要です。