『外国人雇用状況の届出』は外国人人材の雇用にあたり雇用形態を問わず必要となる手続きです。雇用/離職のタイミングで、速やかに事業所管轄のハローワークに届け出なければなりません。外国人人材が雇用保険の被保険者か否かでも手続き方法が異なります。今回は、それぞれのケースに適した届出方法を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
『外国人雇用状況の届出』とは
外国人雇用状況の届出は外国人を雇用する際、また外国人社員が離職する際にも必要となる届出です。ハローワークにて手続きをします。事業主がこの手続を怠った場合30万円以下の罰金が科されます。
ここで、外国人雇用状況の届出の対象となる外国人、詳しい届出方法、届出を提出する際の注意点を押さえておきましょう。
対象になる外国人
外国人雇用状況の届出の対象となるのは、日本の国籍をもたない人です。在留資格が「外交」「公用」「特別永住者」の方はこの要届出対象から外れますが、日本で働くほとんどの外国人が必要になると認識しておいたほうがいいでしょう。正社員、アルバイトなど形態に関わらず、すべての外国人労働者について届出をしなければなりません。
届出の方法
届出の方法については、雇用保険の被保険者かそうでないかで変わります。それぞれの場合での届出方法を見ていきましょう。
雇用保険の被保険者となる外国人の場合
雇用保険に加入/喪失する外国人の届出方法を解説します。
●雇用時
「雇用保険被保険者資格取得届」にある欄に必要事項を記入することで、外国人雇用を届け出たことになります。提出先は事業所管轄のハローワークです。提出期限は「雇用保険被保険者資格取得届」と同じで入社日の属する月の翌月10日までとなっています。
必要事項は以下です。
- 氏名(外国人本人の本名)
- 在留資格
- 在留期間
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 資格外活動許可の有無
- 在留カード番号(令和2年3月1日以降より必須)
- 事業所の名称、所在地など
●離職時
被保険者から外れる、つまり外国人が離職する場合は「雇用保険被保険者資格喪失届」の表面と裏面に記入します。必要事項を記入することで外国人の離職を届け出たことになります。提出先は事業所管轄のハローワークです。提出期限は「雇用保険被保険者資格喪失届」と同じで本人が退職した日の翌々日から10日以内となっています。
【表面】
被保険者の住所、または居所を記入します。
【裏面】
「雇用保険被保険者資格取得届」を提出した際の必要事項1~9と同じ項目です。ただし、「7.資格外活動許可の有無」は含まれません。
雇用保険の被保険者とならない外国人の場合
留学生などは雇用保険の加入対象ではありません。アルバイトなどで雇用保険の被保険者とならないケースでも「外国人雇用状況の届出」は必要です。
雇用保険に関わる手続きが発生しないため、別途、外国人雇用状況届出書(様式第3号)に必要事項を記入して管轄ハローワークに提出します。雇用時も離職時も同じ様式です。
この場合の届出期限は雇用時/離職時ともに翌月の末日までです。必要事項は被保険者の届出項目とほぼ同じですが、9.雇入れ/離職の年月日の記入が加わります。
- 氏名(外国人本人の本名)
- 在留資格
- 在留期間
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 資格外活動許可の有無(※雇用時のみ)
- 在留カード番号(令和2年3月1日以降より必須)
- 雇入れ/離職の年月日
- 事業所の名称、所在地など
届出を提出する際の注意事項
「外国人雇用状況の届出」をする際には、記入の前に必ず本人が持っている在留カードやパスポートを確認しましょう。また「留学」や「家族滞在」の在留資格をもつ外国人の場合は「資格外活動許可」を受けているかどうかの確認が必要です。
本人への口頭聴取などだけで記入・提出を済ませると、就労が許可されていない外国人を雇用してしまう可能性もあります。知らないうちに法律違反となることのないよう厳重な確認のもとに記入・届出を済ませましょう。
確認時に必要な『在留カード』とは
届出の必要事項の中に在留カード番号というものがあります。令和2年3月1日以降より在留カード番号の記載が必須となりました。
在留カードは、日本に3ヶ月以上の滞在を許可された外国人に交付される免許証サイズのカードです。新規・更新・変更のタイミングで新しいカードが発行されます。すべての外国人に常時携帯が義務付けられており、いわゆる身分証明書の位置づけと言えるでしょう。携帯していない場合20万円以下の罰金が科されます。
この在留カードに「外国人雇用状況の届出」に必要な項目の多くが記載されています。注意しておきたいのは在留カードの偽造です。カードの有効/失効については、出入国在留管理庁のサイトで照会できるので、ひとつの目安として活用するとよいでしょう。
※完全なる有効性の証明ではない点にご注意ください。
『外国人雇用状況の届出』はインターネットでも受け付けています
外国人雇用状況の届出は、インターネットでの登録も可能です。厚生労働省は「外国人雇用状況届出システム」を運営しています。ユーザーIDとパスワードを登録し外国人雇用/離職に係る必要事項を記入・提出できるシステムです。
このインターネットでの申請(電子届出)を済ませている場合、「雇用保険被保険者資格取得届」や「雇用保険被保険者資格喪失届」の記入は簡素化できます。それぞれの備考欄に「電子届出によって届出済」と記入するだけです。
また、東京、愛知、大阪、福岡には、外国人雇用サービスセンターが設置されています。外国人留学生の採用に向けた相談に応じる留学コーナーも、全国21ヶ所のハローワーク事業所に設置されました。いずれも事業主からの相談を無料で受け付けている機関なので、ぜひご活用ください。
不法就労にあたる外国人の雇用を避けるために
重要なことなので繰り返します。企業が雇用できる外国人は「不法滞在者でないこと」と「就労が許可される外国人であること」が前提です。不法就労をさせてしまうと、本人だけでなく企業も処罰の対象になります。必ず雇用する前/応募を受け付ける際に、外国人が持っているはずの在留カードを確認しましょう。
就労が認められる在留資格をもっていても、あらためて正式な許可を得なければならない場合もあります。雇用に際しては企業も申請手続きに積極的に協力すべきでしょう。
『不法就労助長罪』とは
不法就労をさせたり斡旋したりすると「不法就労助長罪」にあたり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。在留カードの確認を怠り、知らずに雇用したという言い分も通用しません。
不法就労にあたるのは以下のようなケースです。
- 密入国や在留期限の切れた不法滞在者
- 観光ビザで入国した外国人
- 無許可の留学生や難民認定申請中の外国人
- 就労可能時間数を超える留学生など
- 申請・許可された業務以外の労働をする外国人
これらの点は、在留カードでも確認が可能ですからチェックを怠らないようにしましょう。
就労目的で在留が認められる外国人
就労が認められる外国人は、以下の特定技能や特定活動に従事する人たちです。
●就労目的で在留が認められる外国人 | |||
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これらの外国人は、各在留資格に定められた範囲で報酬を受ける活動が可能です。 | |||
在留資格 | 日本において行うことができる活動 | 在留期間 | 該当例 |
教 授 | 日本の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において研究、研究の指導又は教育をする活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 大学教授等 |
芸 術 | 収入を伴う音楽、美術、文学その他の芸術上の活動(この表の興行の項に掲げる活動を除く) | 5年、3年、1年又は3月 | 作曲家、画家、著述家等 |
宗 教 | 外国の宗教団体により日本に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師等 |
報 道 | 外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上の活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 外国の報道機関の記者、カメラマン |
高度専門職 1号・2号 |
日本の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動、日本の公私の機関との契約に基づいて行う 自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動、日本の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い又は管理に従事する活動など | 5年(1号)又は 無期限(2号) |
ポイント制による高度人材 |
経営・管理 | 日本において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項に掲げる資格を有しなければ法律上行うことが出来ないとされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く) | 5年、3年、1年、4月又は3月 | 企業等の経営者・ 管理者 |
法律・ 会計業務 |
外国法事務弁護士、外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る業務に従事する活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 弁護士、公認会計士等 |
医 療 | 医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 医師、歯科医師、看護師 |
研 究 | 日本の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動(この表の教授の項に掲げる活動を除く) | 5年、3年、1年又は3月 | 政府関係機関や私企業等の研究者 |
教 育 | 日本の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 中学校・高等学校等の語学教師等 |
技術・人文知識・国際業務 | 日本の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは、法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(この表の教授、芸術、報道、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、興行の項に掲げる活動を除く) | 5年、3年、1年又は3月 | 機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等 |
企業内転勤 | 日本に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が日本にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項に掲げる活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 外国の事業所からの転勤者 |
介 護 | 日本の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 介護福祉士 |
興 行 | 演劇、演芸、演奏、スポ―ツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(この表の経営・管理の項に掲げる活動を除く) | 3年、1年、6月、3月又は15日 | 俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手等 |
技 能 | 日本の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動 | 5年、3年、1年又は3月 | 外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人等 |
特定技能 1号・2号 |
日本の公私の機関との契約に基づいて行う特定産業分野(介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業)に属する相当程度の知識若しくは経験を必要とする技能を要する業務(1号)又は熟練した技能を要する業務(2号)に従事する活動 | 3年(2号)、1年、6月又は6月(1号) | 特定産業分野(左記14分野(2号は建設、造船・舶用工業のみ))の各業務従事者 |
●その他の在留資格 | ||
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在留資格 | 在留資格の概要 | 在留期間 |
技能実習 | 研修・技能実習制度は、日本で開発され培われた技能・技術・知識の開発途上国等への移転等を目的として創設されたもので、研修生・技能実習生の法的保護及びその法的地位の安定化を図るため、改正入管法(平成22年7月1日施行)により、従来の特定活動から在留資格「技能実習」が新設されました。 | 法務大臣が個々に指定する期間(2年を超えない範囲) |
特定活動 EPAに基づく 外国人看護師・介護 福祉士候補者、 ワーキングホリデー など |
「特定活動」の在留資格で日本に在留する外国人は、個々の許可の内容により報酬を受ける活動の可否が決定します。 ※届出の際は旅券に添付された指定書により具体的な類型を確認の上、記載してください。 |
5年、4年、3年、2年、1年、6月、3月又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲) |
就労活動が認められていない在留資格
「留学」や「家族滞在」の在留資格をもつ外国人の場合、原則として就労は認められていません。しかしながら、入国管理局からの「資格外活動許可」を取得すれば制限付きで就労が可能です。
制限内容は1週間あたり28時間以内が原則、長期休暇中は1日8時間までの就労が認められています。アルバイトを掛け持ちしている場合も通算となるのでご注意ください。
正式には「パスポートの資格外活動許可証印」もしくは「資格外活動許可書」が発行されますが、この許可取得の有無は在留カード(裏面)でも確認できます。
この「資格外活動許可」も取得できない、つまり就労不可となるのは、文化活動、短期滞在(観光など)、研修などの在留資格の外国人です。
●就労が認められない在留資格 | |
---|---|
※ 資格外活動許可を受けた場合は,一定の範囲内で就労が認められる。 | |
在留資格 | 該当例 |
文化活動 | 日本文化の研究者等 |
短期滞在 | 観光客,会議参加者等 |
留 学 | 大学,専門学校,日本語学校等の学生 |
研 修 | 研修生 |
家族滞在 | 就労資格等で在留する外国人の配偶者,子 |
~就労が認められるためには資格外活動許可が必要です~
外国人雇用はルールを守って適正に|厚生労働省 都道府県労働局 ハローワーク
出入国在留管理庁により、本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(1週間当たり28時間以内など)で、相当と認められる場合に報酬を受ける活動が許可されます。
(例:留学生や家族滞在者のアルバイトなど)
在留中の活動に制限がない在留資格
制限なしで就労活動が可能な在留資格は4種類で、永住者、定住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者です。日系人であっても「短期滞在」など就労不可の在留資格のままでは働くことができず、働くには在留資格の変更手続きが必要となります。
●身分に基づき在留する者 | |||
---|---|---|---|
これらの在留資格は在留中の活動に制限がないため、さまざまな分野で報酬を受ける活動が可能です。 | |||
在留資格 | 日本において行うことができる活動 | 在留期間 | 該当例 |
永住者 | 法務大臣が永住を認める者 | 無期限 | 法務大臣から永住の許可を受けた者(入管特例法の「特別永住者」を除く |
日本人の 配偶者等 |
日本人の配偶者若しくは民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百十七条の二の規定による特別養子又は日本人の子として出生した者 | 5年、3年、1年又は6月 | 日本人の配偶者・実子・特別養子 |
永住者の 配偶者等 |
永住者の在留資格をもつて在留する者若しくは特別永住者(以下「永住者等」と総称する)の配偶者又は永住者等の子として日本で出生しその後引き続き日本に在留している者 | 5年、3年、1年又は6月 | 永住者・特別永住者の配偶者及び我が国で出生し引き続き在留している実子 |
定住者 | 法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者 | 5年、3年、1年、6月又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲) | 日系3世等 |
『外国人雇用状況の届出』の前に正確なチェックを!
外国人を雇用する際には、『外国人雇用状況の届出』が必要です。届出をしないまま働かせたり、記載に虚偽があったりすると、雇用が不意になるだけでなく法律違反で罰せられます。口頭確認ではなく、在留カードや正式な許可証などでの事実確認を行うことが大切です。