「特定技能ビザ」の在留資格で外国人を雇うときには、きちんと計画を立て、書類を作成し、支援を行っていくことが必要です。しかしこれらを事業所で全て行うことが難しい場合は、登録支援機関に委託することになります。
登録支援機関が行う支援には「義務的支援」と「任意的支援」があり、その違いがわかるよう任意的支援について説明していきます。
登録支援機関が行う「任意的支援」とは
特定技能外国人の受け入れにあたっての支援については、出入国在留管理庁サイト内の資料をもとに、その内容が確認できます。それによると、任意的支援と義務的支援は支援内容が大きく違うわけではありません。
義務的支援については最低ラインとして必ずしなければならないもので、任意的支援については義務的支援をスムーズに進めるためにした方がよいものととらえるとよいでしょう。
任意的支援の内容
では、具体的に任意的支援の内容を説明します。義務的支援とどう違うのか、一つひとつみていきます。
事前ガイダンス
ガイダンスをする時期は、雇用締結後、在留資格認定証明書交付申請前または在留資格変更許可申請前です。対面またはテレビ電話等の方法で、特定技能外国人が理解できる言語でします。実施時間の目安は3時間です。
ガイダンスで伝えることは以下の通りです。
- 業務内容、報酬額、労働条件
- 日本で行える活動の内容(技術水準が認められた業務にのみ従事)
- 入国の手続き(ビザ申請後3ヶ月以内に入国すること)
- 保証金の支払いや違約金の契約をしていない、する予定もないことの確認
- 特定技能雇用契約に関しての費用をすでに支払っている場合は、支払先機関、金額、その内訳について確認
- 支援に関する費用は外国人本人に負担させないとしていること
- 入国時には港や空港で出迎え、事業所か住居に送ること
- 適切な住居を確保するための支援をすること
- 職業生活、日常生活または社会生活に関する相談や苦情を受ける体制があること
- 支援担当者の氏名と連絡先
上記のことに加え、任意的に伝えることは以下の通りです。義務的支援に加え、本人にとってより身近なこととして気になることです。
- 入国時の日本の気候、服装
- 国から持参すべきもの、持参したほうがよいもの、持参してはいけないもの
- 入国後、当面必要となる金額とその用途
- 事業所から支給されるもの(作業着など)
出入国する際の送迎
入国の際、港や空港に迎えに行き、事業所または住居にまで送ります。出国の際には出国手続きをする港や空港に送り、保安検査場の前まで同行し入場を確認します。
技能実習2号等から特定技能1号へ変更した外国人の送迎は、義務的支援に含まれません。ただし事業所の判断で、送迎したり費用を負担したりすることができます。送迎をしない場合は、交通手段や緊急時の連絡先を伝えておきます。
適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
①~③のいずれかを行います。
- 特定技能外国人本人が賃借人として賃貸借契約を結ぶときには、不動産仲介事業者や賃貸物件に関する情報を提供します。また必要に応じて同行し住居探しを手伝います。
また、賃貸借契約に際し必要な連帯保証人がいないときは「特定技能所属機関等が連帯保証人となる」か「利用可能な家賃債務保証業者を確保し、登録支援機関等が緊急連絡先となる」のどちらかの支援をします。 - 特定技能所属機関等が賃借人となって賃貸借契約を締結した上で、特定技能外国人との合意のもとに住居として提供します。
- 特定技能所属機関が所有する社宅等を、特定技能外国人の合意のもとに住居として提供します。
特定技能契約の解除・終了があった場合、次の受入先が決まるまで住居の確保ができるよう支援し、日常生活の安定・継続に支障が生じないようにします。
生活に必要な契約に係る支援
金融機関での口座開設、携帯電話の契約、ガスや電気、水道など生活に必要な契約に関する必要書類を渡し、その窓口を案内します。必要であれば同行し補助します。
上記の契約について、契約途中で契約の変更や解除を行う場合、スムーズに進められるよう説明、同行などの補助をします。
日本語学習の機会の提供
特定技能外国人の希望に基づき、①~③のいずれかの方法で支援します。
① 就労・生活する地域の日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報を提供し,必要に応じて1号特定技能外国人に同行して入学の手続の補助を行うこと
引用元 1号特定技能外国人支援に関する運用要領(PDF資料)|法務省
② 自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報を提供し,必要に応じて日本語学習教材の入手やオンラインの日本語講座の利用契約手続の補助を行うこと
③ 1号特定技能外国人との合意の下,特定技能所属機関等が日本語教師と契約して,当該外国人に日本語の講習の機会を提供すること
支援責任者又は支援担当者その他職員が特定技能外国人への日本語指導・講習の積極的な企画・運営を行います。
例として、日本語本語能力試験の受験を支援する、資格取得者への優遇措置を講じる、ことによって日本語の自主学習を促すことや、日本語教室や日本語教育機関の入学金や月謝、教材費、日本語教師との契約料などの経費を全部または一部を負担することなどが考えられます。
相談又は苦情への対応
特定技能外国人から職業生活、日常生活または社会生活に関する相談や苦情を受けたときは遅滞することなく応じ、助言や指導を行います。内容によっては、適切な機関(地方出入国在留管理局、労働基準監督署等)を案内し、ときに同行して必要な手続を手伝います。
こういった対応は、特定技能外国人が十分に理解できる言語により実施します。
直接必要な手続を行いやすくするため、相談窓口の情報一覧を作成し、あらかじめ手渡しておきます。また特定技能所属機関等の事務所に相談窓口を設け、相談・苦情専用の電話番号やメールアドレスを事前に伝えておきます。
仕事または通勤によってのけがや病気、また死亡するといったことがあった場合は、特定技能外国人の家族に労災保険制度について説明し、必要な手続の補助を行います。
日本人との交流促進に係る支援
特定技能外国人と日本人との交流を促すために、地方公共団体やボランティア団体等が主催する交流の場についての情報提供、地域の自治会等の案内などをします。行事等へ参加するときにはその手続きを補助します。
さらに必要に応じて同行し、行事参加についての注意事項や実施方法を説明するなどの手伝いをします。
また日本の文化を理解するための行事について情報提供をし、必要であれば同行し、現地で説明するなどの補助をします。
各行事への参加を希望する場合は、業務に支障がない範囲で有給休暇扱いにしたり、勤務時間について配慮したりするなどします。
定期的な面談の実施、行政機関への通報
特定技能所属機関等は、労働状況や生活状況を確認するため、外国人本人とその監督をする立場にある者(直接の上司や雇用先の代表者等)それぞれと、定期的(3ヶ月に1回以上)な面談を実施します。面談はテレビ電話等ではなく、対面により直接話をしなければなりません。
定期的に行う面談の場では、生活一般に関するあらゆることについて、以前に説明済の内容であっても、特定技能外国人が十分に理解できる言語により改めて伝えます。
支援責任者または支援担当者は、労働基準法(長時間労働、賃金不払残業など)その他の労働に関する法令(最低賃金法、労働安全衛生法など)の規定に違反していることを知ったときは、その旨を労働基準監督署やその他の関係行政機関に通報する必要があります。
また面談の中で、入管法違反、旅券及び在留カードの取上げ等その他の問題の発生を知ったときは、その旨を地方出入国在留管理局に通報する必要があります。
ただし洋上で長期間行われるなどの漁業分野(漁業)における定期的な面談については、長期間にわたって洋上にいること、洋上での通信環境の脆弱さなどの理由から、面談に代えて3ヶ月に1回以上の頻度で無線や船舶電話によって特定技能外国人とその監督者と連絡をとることとし、近隣の港に帰港した際に面談を行うことができます。
特定技能外国人自らが通報を行いやすくするため、関係行政機関の窓口の情報を一覧にするなどして、あらかじめ手渡しておきます。
任意的支援が、本人の自主的な行動へとつながる
具体的な支援の内容が「義務的支援」という形で示され、その義務的支援をより円滑に進めるための事前準備、特定技能外国人の立場に立っての積極的な支援が「任意的支援」になります。
つまり、特定技能外国人が職業生活や日常生活、社会生活を問題なく送れるよう、迷いや困りごとを予測し、支援側から誠意をもって手を出すことが任意的支援といえます。特に大事なスタート時期に積極的に支援することは、より早い時期に、自立した生活を送るために必要なことでしょう。