コンビニに行くと、店員は外国人ばかりという話を耳にするようになってどれくらいたったでしょうか。このことはもう話題に上らないほど、コンビニで外国人店員を目にすることは当たり前になってきました。
どうして日本人ではなく外国人の店員がこんなに増えたのでしょう。日本人はなぜ働きたがらないのでしょうか。
コンビニの外国人店員はなぜ増えた?
コンビニ店員として外国人が雇われるようになったのは、コロナが流行する前からです。その頃の事情は、「日本人を雇いたいが募集しても来ないからしかたなく」といった声もありました。日本人はなぜコンビニでバイトをしたがらなかったのでしょう。
理由は、条件的に満足できなかったこと。
都道府県ごとに最低賃金の額が定められていますが、コンビニはその最低賃金の額程度の時給であることがほとんどです。つまり、他と比べて安すぎる。これが敬遠された理由です。他にもこちらの望む時間いっぱいに働けない、といった理由もよく聞きました。
他のアルバイトと比較するからこその文句も多く、すぐにやめてしまう日本人も多いと聞きます。条件に関する不満や要望も多く、正直なところ、コンビニオーナーからは「日本人は使いにくい」という声もあったのです。
その点、外国人留学生であれば週あたり28時間という制限があるため、それ以上の時間を望むことは少なく、時給面でも文句を言わずに働いてくれます。日本人より留学生のほうが優秀、との声もあるそうです。
外国人がコンビニで働きたい理由
実はコンビニでのアルバイトは、外国人留学生の間ではエリートがするといったイメージがあります。来日してすぐの留学生には決してできない難易度なのです。日本語能力試験でいえばN3程度の力は最低必要とされます。
また、実際コンビニでのアルバイトはおもしろい、ためになるという声も数多く上がっています。探せばもっと時給の高いアルバイトもあるでしょう。たとえ時給は安めでも、あえてコンビニでのアルバイトを選ぶという外国人留学生も多いのです。
それには理由があります。
接客を通して日本語が学べる
学校で日本語を勉強している外国人留学生は、勉強していることが実際に役立つかを知りたがっています。「習った外国語が通じた!」この喜びは万国共通です。しかし残念ながら、日本語があまり必要でないアルバイトもあります。
その点コンビニでのアルバイトは接客がともなうので、日本語を使う機会は豊富にあります。実践練習をしながら稼げるのですから、一石二鳥という気持ちで働いている留学生も多いと考えられます。
客層がさまざまで、そこがおもしろいという学生の声もあります。方言や年齢による話し方の違いなどを実際に耳にするのは貴重な体験に違いありません。
最新技術や情報が得られる
コロナの影響もあり、無人のコンビニが出てくるなど、コンビニは最新技術の導入が早い業界です。以前からある客層をつかむためにレジで年齢を入力するシステムや、おつりが自動で出てくる機械など、若者にとっては非常に刺激的です。
また新商品が次々と入ってくるのが楽しいという声も聞こえます。日本人の若者もコンビニの利用率は高いですから、季節ごとに新しく開発される飲み物や食べ物をいち早く知ることができるのは同じく楽しみなことでしょう。
自分の希望する時間帯にシフトが組める
勉強が本分の外国人留学生にとって、授業に支障なく働けるかどうかということは重要なポイントです。その点コンビニは24時間365日営業ですから、幅広い時間帯、曜日の中から自由に選べるという良い点があります。
留学生の就業時間については週28時間までといった制限がありますが、長期休みのときには週40時間まで増やすことができます。そんなときにも柔軟に対応してもらいやすい職場です。
外国人がコンビニで働く際に注意すること
コンビニで外国人が働く場合に注意することがいくつかあります。楽しいことは多いが嫌なこともある。それはどの仕事でも同じかもしれませんが、外国人だからこその注意することについてお伝えします。
就労時間の制限
留学生については、就労時間は週28時間という制限は必ず守らなければなりません。雇う側にもハローワークへの届け出義務があります。これを怠ると処罰もされます。
別のところでかけもちをすればばれない、給料は手渡しでもらっているから大丈夫、といったことも聞きますが、実際にビザ更新でその事実を指摘され、更新できなかったということは少なからずあるのです。マイナンバーカードが浸透しつつある最近では、さらにこういったことには厳しくなっています。
滞在資格である留学ビザを失うことのないよう、規則は必ず守ってください。雇う側も留学生の話を鵜呑みにしないよう事前に調べ、遵守するようにしてください。
不十分な日本語力
日本語力が十分ではないために起こるトラブルは仕方ないものともいえます。お客様の話すことがわからず、何度も聞き返すうちに怒られてしまうなどは日常的にあることでしょう。
それをきっかけにさらに日本語力をつければいいですし、タイミングよく店長や同僚などに助けを求める対応力を鍛えるいい機会ともいえます。そういったこと全てがこの仕事の醍醐味です。話もせず黙々と働く仕事にはないしんどさですが、やりがいもあります。
しかし、中には悪質なケースもあります。たとえば、外国人の話す日本語の発音やアクセントの違いをわざと真似される、国に帰れと言われる、など。こういったことは留学生の心を傷つけます。
文化の違い
日本で生まれ育てば当然わかることでも、違う文化で育った外国人にはわからないことはたくさんあります。
たとえば、コンビニのお弁当ひとつをとっても、箸で食べるものとスプーンやフォークなどのほうが食べやすいものがあります。中華丼はスプーンなのに牛丼は箸。こういった違いを一つひとつ覚えていかなくてはいけません。
最近はマイバッグを持参するようになったので変わってきていますが、以前であれば、冷たいものと熱いものは同じ袋に入れない、洗剤などと食べ物を別の袋にするなど、細かい決まりごとがありました。
初めて日本に来た外国人留学生にとっては、そうする理由も心情も理解できず、ただ覚えるしかありません。
コンビニが外国人特定技能に組み込まれる可能性
実のところ、コンビニオーナーからは「日本人よりも外国人を雇いたい」という声が大きくなっています。まじめに文句を言わず、明るく笑顔で働いてくれるといったこともありますが、外国人ならではの理由もあるようです。
日本人の多くは英語が苦手です。さらに英語以外の言語ができる人を探すことはかなり難しいことでしょう。
しかし留学生は、日本語は不十分でも母国語はもちろんペラペラです。ネパールやスリランカ、フィリピンからの留学生などは英語もできることがほとんどです。同じ国出身のお客様だけでなく、英語で幅広く対応できる外国人留学生は、特に多国籍のお客様が来る可能性の高い都会で重宝されるのは当然です。
しかし、問題となるのは週28時間の壁。そこを超えられる「特定技能」をコンビニ店員にも適用することが検討されたこともありました。
しかし実際には、特定技能で来日する外国人に対してするべきさまざまな準備の煩雑さ、外部委託する場合にかかる費用の負担などの問題から、実現には至っていません。
しかしコンビニオーナーの高齢化という問題もあり、慢性的な人手不足という問題は今後も続くことでしょう。この先、特定技能ビザに関するさまざまなハードルがなくなり、就労時間の制限のない外国人を入国させる可能性は今後も十二分にあり得ます。
コンビニの人手不足解消のための特定技能
技能実習生ビザは、一部の心ない雇用主によってさまざまな問題が取り沙汰され、評判を落としています。その後に作られた「特定技能」は、雇う側にとっても雇われる側にとっても、人手不足を補うためと明言されている在留資格として期待されています。
無人のコンビニも登場するなど、慢性的な人手不足を解消するための方策も進められていますが、そういった方策のひとつとして改めて「特定技能」が再検討されるかもしれません。今後の動向には大いに注目するべきでしょう。