日本では、2019年4月から「特定技能」という在留資格が新たに新設されました。これにより外国人を雇用する幅が広がり、在留資格の対象となった業種で新たな人材の確保が容易になったのです。
しかし外国人との雇用契約や申請手続きなどは複雑な部分が多く、要領をつかみにくいという方もいるでしょう。そこで今回は特定技能の概要や対象となる14業種、必要な申請手続きなどについて解説していきます。
在留資格『特定技能』とは
近年の日本では、アベノミクスの推進などにより就職状況の改善や失業率の低下などの様々な改善がなされています。しかし課題点もまだまだ多く、日本の中小企業や小規模企業などでは年々、人手不足が深刻化しているのが現状です。
特に介護や建設現場などの特定の分野で顕著に現れており、職種によってバラつきがあります。政府はそれらの人手不足に悩まされている特定の職種の影響で、日本経済や人々の生活を維持するのに多大な悪影響を及ぼしてしまうことを危惧しました。
そこで外国人労働者が働ける職種や業種の幅を広げることで、企業の人手不足に対応する施策を打ち出したのです。これが2019年4月に新設された在留資格「特定技能」になります。
これまでの外国人労働者の受け入れ状況
外国人の方が日本で働くためには、労働が許可されていることを証明する在留資格が必要になります。この資格の取得条件は様々ですが、これまでは知識や素養が必要となる一部の専門的な職業に限られていました。
具体的には、
- 技術職:ITエンジニア、機械系技術者、電気系技術者、研究開発職など
- 人文知識:経営企画、経理や財務、総務や人事、商品企画など
- 国際業務:通訳や翻訳、語学教師、海外マーケティング、海外貿易業務
などです。
またこれらの職業に当てはまらない仕事、工場での製造業務や農業などに関しても「技能実習」という在留資格を得ることで働けます。ただし技能実習は“技能の習得のための在留資格”であり、他の就労可能なビザと比較すると制約も多いのが現状です。
今回新設された「特定技能」では、より多くの外国人を受け入れるだけでなくこうした既存の問題点を改善する狙いもあります。
特定技能1号
新しい在留資格である特定技能では、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に分かれています。
「特定技能1号」は一定の知識や経験があれば、特定産業分野の仕事に携われる資格です。この資格を取得するには、日本語能力や職業ごとの試験を受けてそれぞれの水準に達しなければなりません。ただ技能実習2号を修了している外国人の方は、これらの試験を免除できます。
求められる技能水準は、受け入れる分野の職業で即戦力となるぐらいの知識や経験をもっていること。日本語能力の水準については、基本的に生活に支障がない程度の日常会話ができることです。
もちろんこれらの水準は業種や事業により異なってくるため、自ずと試験内容にも違いが出てきます。
特定技能1号の対象となる職業は介護やビルクリーニング、自動車整備などの14分野になります。(詳しくは下記の「特定技能14業種と所管省庁」を参照)
在留期間は最大で5年となっており1年または6ヶ月、もしくは4ヶ月ごとの更新が必要です。そして期間に制限があるため、日本への永住や家族との同伴は基本的に認められていません。
特定技能2号
「特定技能2号」は、特定技能1号よりもさらに絞られた業種で取得できる在留資格です。技能水準も熟練に達する必要があり、高度な知識や技術を求められます。いわば特定技能1号の上位に位置する資格といっても過言ではありません。
資格取得については、業種ごとに定められている試験に合格することで特定技能1号から移行できるよう検討されています。そのため試験が必要になるのは、技能水準の確認のみで日本語能力は問われません。
2020年3月時点で対象となっている職業は、建設と造船・舶用工業の2分野のみです。かなり限定された在留資格ですが、その分要件を満たせば家族(配偶者、子)との同伴も許可されます。
また在留期間にも上限がなく、一定の期間で更新すれば日本に長期間滞在することが可能です。更新期間は3年、1年もしくは6ヶ月の間隔で定められています。
ただ特定技能2号の取得については、まだ実装を検討している段階です。技能試験も実施されていませんが、2021年度から開始される予定になっています。
特定技能14業種と所管省庁
現在、特定技能の対象となっている業種は以下の通りです。
業種 | 所管省庁 | 試験実施機関 | 備考 |
---|---|---|---|
介護 | 厚生労働省 | 厚生労働省 | 訪問介護などの訪問系サービスは対象外です。 |
ビルクリーニング | 公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会 | 主な業務は、建築物内部の清掃です。 | |
素形材産業 | 経済産業省 | 経済産業省 | 13の業務区分に分かれます。 |
産業機械製造業 | 18の業務区分に分かれます。 | ||
電気・電子情報関連産業 | 13の業務区分に分かれます。 | ||
建設 | 国土交通省 | 一般社団法人 建設技能人材機構 | 特定技能2号の対象となる分野です。 |
造船・舶用工業 | 一般財団法人 日本海事協会 | 特定技能2号の対象となる分野です。 | |
自動車整備 | 一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会 | 主な業務は、自動車の日常点検整備や定期点検整備、分解整備です。 | |
航空 | 公益社団法人 日本航空技術協会 | 試験区分は、空港グランドハンドリング(地上走行支援や手荷物取扱業務など)と航空機整備の2種類に分かれます。 | |
宿泊 | 一般社団法人 宿泊業技能試験センター | 業務は宿泊施設におけるフロント業務や接客、企画や広報、レストランサービスなどです。 | |
農業 | 農林水産省 | 一般社団法人 全国農業会議所 | 試験区分は、耕種農業全般と畜産農業全般の2種類に分かれます。直接雇用に加えて、派遣労働での受け入れも可能です。 |
漁業 | 一般社団法人 大日本水産会 | 試験区分は、漁業と養殖業の2種類に分かれます。直接雇用に加えて、派遣労働での受け入れも可能です。 | |
飲食料品製造業 | 一般社団法人 外国人食品産業技能評価機構 | 酒類を除いた飲食料品の製造や加工、安全衛生業務になります。 | |
外食業 | 飲食物の調理、接客、店舗管理業務が該当します。 |
特定技能14分野の試験詳細
外国人の方が特定技能を取得するには、各業種の団体が作成した特定技能評価試験に合格する必要があります。この試験は国が定める基準に基づいており、全部で14分野ある業種ごとに内容も異なります。
実施されるのは、
- 日本語能力水準を確認する試験
- 技能水準を確認する試験
の2種類です。
ただ原則としてはどんな国籍の方でも受けられる特定技能の資格ですが、実際に取得できる国はある程度限定されています。その主な対象は、日本で仕事先を探さなければならない事情のある外国人の方です。
例えば特定技能に関連して、日本では外国人に借金をさせて保証金や手数料を支払わせる悪質なブローカー排除のために様々な国と2国間協定を結んでいます。
具体的には、
- フィリピン
- カンボジア
- ネパール
- ミャンマー
- モンゴル
- スリランカ
- インドネシア
- ベトナム
- バングラデシュ
- ウズベキスタン
- パキスタン
- タイ
- インド
の13ヶ国。これらの国々から優先的に外国人の雇用を受け入れる方針があります。そしてフィリピンではすでに日本語試験が実施されており、今後もこの13ヶ国で実施する予定です。
令和2年4月からは国内試験の受験資格が拡大
これまで日本国内で行われる特定技能の試験では、一定の条件を満たしていない外国人の方だと受けられないケースがありました。
具体的には以下の通りです。
- 過去から現在に至るまで中長期的な在留経験のない人
- 退学や除籍処分となった留学生
- 失踪した技能実習生
- 「特定活動(難民申請)」の在留資格で日本に滞在している人
- 技能実習や研修などの在留資格で日本に滞在中の人
しかし令和2年4月1日からは、たとえ中長期的な在留歴がない方でも「短期滞在」の在留資格を持っている方なら試験を受けられるようになります。ただ受験は可能でも、過去の在留状態がよくないと判断された場合には許可が下りないこともあるようです。
受験資格を拡大する理由については、特定技能による外国人の受け入れが少ないこと、海外での試験の開催が進んでいないことが挙げられています。
日本語試験(全分野共通)
日本語能力水準を確認する試験は2種類あり、どちらかに合格する必要があります。
そのうちのひとつである「国際交流基金日本語基礎テスト」は、特定技能の制度と合わせて開始された新たな日本語試験です。そのため対象となるのは、母国語が日本語ではなく働くことを目的として日本に訪れる外国人です。
同試験の内容は、
- 文字の読みを測る「文字と語彙」
- 日常生活で使う会話について測る「会話と表現」と「聴解」
- 手紙や掲示物などの説明を読んで理解できるかを測る「読解」
になります。
そしてA1〜C2までのレベルで判定され、日本語の基本的な文章や表現が理解できており、簡単な日常会話ができる「A2」レベルの能力があれば合格です。
もう一方の「日本語能力試験」は、30年ほどの歴史があり国内外で幅広く実施されている日本語試験。特定技能の試験だけではなく、就労ビザを取得する際にも採用されています。
こちらはN5〜N1までのレベルがあり、小さい数字ほど難易度が高いです。業種によって求められるレベルが異なる場合もありますが、基本的に「N4」レベルがあると特定技能の要件を満たせます。
N4レベルは、
- 「基本的な語彙や漢字を使って書かれた身近な話題の文章を読んで理解できる」
- 「ややゆっくり話す程度の日常会話ならほとんど理解できる」
などが合格ラインです。
また介護分野では、これとは別に「介護日本語評価試験」というものを受ける必要があるので注意してください。
介護
特定技能の介護では、技能水準を確認するための「介護技能評価試験」を受ける必要があります。試験の内容は「介護の基本」や「こころとからだのしくみ」といった学科試験と、正しい手順で介護できるかなどの実技試験の2種類です。
具体的な水準としては、介護職種・介護作業の第2号技能実習修了ほど。介護業務の基本的な考え方に基づき、利用者に応じた介護を一定のレベルで実践できるかを問われるものです。
国内だけでなく海外での試験も実施されており、2国間協定を結んだ9ヶ国で開催されています。直近の2020年2月だと、フィリピン・カンボジア・ネパール・インドネシア・ミャンマーで試験が行われました。
日本語試験(介護分野)
介護分野の特定技能を取得する場合、先ほどご紹介した「国際交流基金日本語基礎テスト」もしくは「日本語能力試験」のどちらかに加えて、「介護日本語評価試験」にも合格しなければなりません。
「介護日本語評価試験」は、介護現場の仕事に就く上で支障のない程度の水準を測る試験です。受験資格は17歳以上であることになります。
試験の内容は、
- 介護のことば
- 介護の会話・声かけ
- 介護の文書
となり、仕事現場で使う日本語能力を試されるものです。
2019年度の開催は5〜6回ほど。今後の実施時期は4月と6月、以降3〜4回程度行われます。国外試験も開催しており、フィリピンやベトナムなどの2国間協定を結んだ9ヶ国で実施されるようです。
ビルクリーニング
ビルクリーニング分野は、建物内の清掃を行うビルメンテナンス会社などで働くための特定技能です。こちらを取得するには、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」を受ける必要があります。
内容は写真やイラストを見て答えを選ぶ「判断試験」と実際の清掃作業を行う「作業試験」の2種類に分かれており、同協会のホームページから過去問題を閲覧することが可能です。
2019年には国内やミャンマー、フィリピンで同試験を開催。2020年4月から5月にかけても北海道や宮城、東京や大阪などの日本各地で実施される予定ですが、新型コロナウイルスの影響で中止される恐れがあります。
素形材産業
素形材産業分野は、共通した業務が多いことから産業機械製造業と電気・電子情報関連産業の2分野と技能水準や評価水準を統一した「製造分野特定技能1号評価試験」により技能評価を行います。
試験内容としては、主に鋳造・鋳造・ダイカスト・機械加工・金属プレス加工・鉄工・工場板金・めっき・アルミニウム陽極酸化処理・仕上げ・機械検査・機械保全・電子機器組み立て、電気機器組み立て・プリント配線板製造・プラスチック成形・塗装・溶接・工業包装の19区分です。
判定基準は、同試験の免除となる技能実習2号修了者の「技能検定3級試験」と同じ程度になります。
試験は令和2年1月に、初めて製造分野特定技能1号評価試験(溶接)が開催されました。3月にも溶接以外の評価試験がフィリピンで実施される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で中止になっています。
産業機械製造業
産業機械製造業分野は、素形材産業と同様に「製造分野特定技能1号試験」で技能水準の判定を行います。試験の内容や開催時期についても、素形材産業や電気・電子情報関連産業と同様です。
電気・電子情報関連産業
電気・電子情報関連産業分野においても、上記の2分野と共通の評価試験である「製造分野特定技能1号試験」が実施されます。試験の内容や開催時期は、上記の素形材産業や産業機械製造業と同様です。
建設
建設分野では、建設技能人材機構による「建設分野特定技能1号評価試験」が実施されており、30問の学科試験と職種ごとに異なる実技試験の2種類で判定されます。
試験範囲は、型枠施工・左官・コンクリート圧送・トンネル推進工・建設機械施工・土工・屋根ふき・電気通信・鉄筋施工・鉄筋継手・内装仕上げなどです。評価水準は技能検定3級ほどとなっており、初級レベルの技能があるかを判断します。
試験の開催は未定で、令和2年3月に実施予定だった説明会も新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため中止になっているようです。
造船・舶用工業
造船・舶用工業分野は、船級関連業務を展開するClassNKが「造船・舶用工業分野特定技能1号試験」を実施しています。
主な内容は、溶接・塗装・鉄工・機械加工・仕上げ・電気機器組立てなどです。そして学科試験と実技試験の2種類により判定が下されます。
2019年11月には、フィリピンで試験が実施されました。造船・舶用工業分野は特定技能2号の対象にもなっていますが、試験の日程などは未定のようです。
自動車整備
自動車整備分野では、一般社団法人の日本自動車整備振興会連合会による「自動車整備分野特定技能評価試験」を実施しています。
試験内容は自動車に関する構造や機能、点検や修理などに関する学科試験と、簡単な基本工作や分解、組み立てや修理などを行う実技試験の2種類です。主に道路運送車両法に基づいた日常点検整備や定期点検整備、分解整備に関する必要な技能を推し測ります。
これまで2019年12月〜2020年3月に、フィリピンで試験が実施されました。現在のところは4月以降も実施する予定ですが、現地の情勢次第では中止になる可能性も否めません。
航空
航空分野では、公益社団法人日本航空技術協会による特定技能評価試験が実施されます。なお試験は「グランドハンドリング」と「航空機整備」の2種類に分かれており、それぞれ異なる業務に区分されているのが現状です。
「グランドハンドリング」では、
- ランプエリア内での安全やセキュリティ確保
- 貨物のハンドリング
- 手荷物のハンドリング
- 客室内清掃
の学科と実技試験になります。
「航空機整備」では、
- 航空機の基本技術(締結や電気計測など)
- 作業安全や品質
- 航空機概要
の学科試験、締結や電気計測についての実技試験が実施されます。
これまでフィリピンやモンゴルで開催されており、2021年度は5月に東京で開催される予定です。
宿泊
宿泊分野では、一般社団法人の宿泊業技能試験センターによる「宿泊業技能測定試験」が実施されます。
学科試験においては、フロント業務や広報・企画業務、接客業務・レストランサービス・安全衛生やその他基礎値知識が問われるでしょう。実技試験は宿泊業の基本事項について様々な質問が行われ、施設スタッフになったつもりで受け答えをするシミュレーションになります。
国内では2019年4月と10月に、国外では2019年10月にミャンマーで開催されました。今後は4月に福岡や広島、東京や大阪などの日本全国で開催。海外での実施は未定です。
農業
農業分野では、一般社団法人全国農業会議所の「農業技能測定試験」を2019年度から実施。この試験は主に「耕種農業」と「畜産農業」の2種類に分かれており、作物の栽培方法や飼養管理、安全衛生などについての知識や技能が問われます。
2019年には10月と11月にフィリピンで試験が実施されました。2020年1月から3月においてはフィリピンやカンボジア、インドネシアで開催されているようです。
漁業
漁業分野では、一般社団法人大日本水産会による「漁業技能測定試験」が行われています。試験内容は主に漁業と養殖業の2種類です。
筆記試験では、漁業全般(養殖業)に関する知識や安全衛生に関すること、業務で必要とされる日本語能力を測定。実技試験では、図やイラストから漁に使う道具や設備の取り扱い、養殖水産動植物の育成管理などに関する技能を評価します。
2020年1月には、インドネシアで漁業技能測定試験(漁業)が実施されました。今後もインドネシアに加えて、フィリピンでの受付が開始されています。
飲食料品製造業
飲食料品製造業分野は、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構が「特定技能1号測定試験」を実施しています。
学科試験の科目は、
- 食品安全や品質管理の基本的な知識
- 一般衛生管理の基礎
- 製造工程管理の基礎
- HACCPによる衛生管理
- 労働安全衛生に関する知識
などです。
実技試験では、図やイラストなどを用いたシミュレーションにより、正しい行動や判断ができるかなどの業務で必要となる技能を評価します。
日本国内だと2019年10月に、海外だと2019年11月にフィリピンで試験を実施。2020年以降も、フィリピンやインドネシアで開催しています。
外食業
外食業分野も飲食料品製造業と同様に、外国人食品産業技能評価機構による「特定技能1号測定試験」が実施されています。
そして学科試験は、
- 衛生管理
- 飲食物調理
- 接客全般
などの知識を測定。実技試験では図やイラストを用いたシミュレーションで、調理や食材、接客サービスやクレーム対応など行動や状況判断が問われます。
海外での試験実施は2019年11月からフィリピンではじまり、2020年1月からカンボジア、2月からミャンマーでも開催されているのが現状です。
特定技能取得に必要な申請手続き・申請書
外国人の方が特定技能を取得して日本へ入国するには、状況に応じて様々な申請手続きや提出書類などを用意する必要があります。
例えばこれから日本に入国する外国人の場合、「在留資格認定証明書交付申請」を行わなければなりません。その際に用意する提出書類は、
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 縦4cm×横3cmの証明写真
- 返信用封筒
- 身分証明書
などが挙げられます。
また直接雇用する機関が法人や個人、適用事業所であるかないかなどで用意する書類が異なるため注意しなければなりません。
より詳しい情報については、出入国在留管理庁のホームページをご参照ください。
特定技能1号による在留期間は最大で5年ですが、その間に定期的な更新(1年、6ヶ月または4ヶ月ごと)をするもの。その際にも「在留期間更新許可申請」をする必要があります。
すでに何らかの理由で日本に在留している外国人の場合は、「在留資格変更許可申請」を行うことになるでしょう。いずれのケースも、上記の法務省のホームページから必要な申請書類をダウンロードすることが可能です。
また2020年3月24日からは、特定技能の申請手続きがオンラインで行えるようになりました。申請できるのは外国人本人ではなく、登録支援機関や受け入れ先企業、弁護士や行政書士などが対象です。
オンライン申請の詳しい概要については、出入国在留管理庁のホームページでご確認ください。
特定技能取得・雇用までの流れ
特定技能制度により外国人の方は、日本の様々な業種で働けるようになります。では具体的に在留資格の取得から企業などへの雇用まではどんな流れで行われるのでしょうか。
ここからは特定技能試験から就労開始までの流れについて解説していきます。
技能試験に合格
外国人の方が日本で働く資格を得るためには、まず特定技能の試験に合格する必要があります。
試験の内容は業種によって異なりますが基本的には、
- 特定分野で働く知識や技術を判定する「技能試験」
- 日本でのコミュニケーションを判定する「日本語試験」
の2種類の評価試験を受けることになるでしょう。
外国人がどの技能試験を受けるかは、職業によって異なります。例えばラーメン店やレストランなら外食業、製造業などでは素形材産業などの製造3分野のどれかになるはずです。
技能試験や日本語試験の概要については、上記の「特定技能14分野の試験詳細」で述べたそれぞれの法人や団体などで確認してください。
就職活動
特定技能試験に合格してビザの要件を満たした外国人の方は、実際に働ける企業を探すことになります。
具体的には、
- 求人情報サイトなどの企業が直接募集しているものに応募
- ハローワークや民間の人材紹介会社などに登録して仕事の斡旋を受ける
などです。
また外国人を受け入れる企業に関しても、特定技能ビザで働ける14分野の業種に該当している必要があります。細かい業務区分に分かれている製造業などでは、どの分野にあたるか判断しにくいこともあるため、事前に関係省庁などに問い合わせると良いでしょう。
雇用契約
外国人の方が働ける企業が見つかり就職が内定したら、受入れ先となる企業と雇用契約を結ぶことになります。受入れ先となる企業は、この時外国人の方に事前ガイダンスや健康診断を受診させることが必要です。
そして健康診断書などの資料は、この後の在留資格申請の書類にもなるため必ず行いましょう。
また企業側は外国人を雇用する際に、入管法だけでなく労働法にも注意しなければなりません。なぜなら「特定技能雇用契約」の内容に沿って契約を結ぶ必要があるから。下記の章で詳しく解説します。
特定技能雇用契約
特定技能雇用契約では、外国人と受入れ企業の間で適正な契約内容にすることが定められています。
例えば外国人の方は、雇用する段階で一定レベルの業務に勤められる水準が求められるのです。しかしこちらは特定技能の評価試験などで合格しているため、基本的には問題ありません。
労働時間や報酬額に関しては、同じ職場で働く日本人労働者と同等の待遇にする必要があります。つまり外国人だからといって、給料を安くしたり労働時間を長くしたりすることはできません。
もちろん教育訓練の実施や福利厚生施設などの利用を制限するなど、その他の事項においても差別的な待遇をすることは禁止されています。
また外国人の方が何らかの理由で一時帰国をする際には、企業側が有給休暇を取得させるよう配慮しなければなりません。たとえ年次有給休暇を全て使っていた場合でも、追加の有給や無給休暇などでサポートすることが必要です。
そして特定技能雇用契約が終了した後、帰国する際に掛かる旅費を外国人の方が支払えない場合、受入れ企業が負担することになります。
在留資格認定証明書の申請
特定技能雇用契約を結んだら、次に在留資格認定証明書交付申請をします。この申請では外国人が日本語での手続きに不慣れなことも想定されるので、受入れ企業などが代理で行うことも可能です。
そして特定技能の在留資格を申請する場合には、在留資格認定証明書交付申請書や身元保証書などの書類が必要になります。詳しくは上記の「特定技能取得に必要な申請手続き・申請書」の項でご確認ください。
交付された在留資格認定書は受入れ企業などが受け取り、契約を結んだ海外にいる外国人に発送します。
査証(ビザ)申請
在留資格認定書を受け取った外国人は、現地の日本大使館や領事館に査証(ビザ)の申請を行います。そしてビザが発行されたら、外国人が日本に入国する手筈になります。
入国審査
日本へ訪れる際に在留資格証明書やビザがあれば、比較的スムーズに入国できます。しかしビザなどは、必ずしも入国を保証するものではありません。
日本の上陸審査時には、入国審査官が「有効なパスポートを所持しているか」「入国目的に嘘や偽りがないか」などを厳しく審査します。今回の場合であれば、「特定技能を取得し、日本で仕事するために訪れた」などの理由となるはずです。
無事に審査が通れば、在留資格の証明となる「在留カード」が交付されて日本に入ることができます。
また空港によっては、上陸審査の際に在留カードを交付していないことも。その場合は、入国後に届け出た住所あてに簡易書留で郵送されます。
在留資格の許可がおりたら就労開始
外国人が労働を開始するには、必ず在留資格の許可がおりてからにしましょう。もし許可がおりる前に働き始めてしまうと、不法就労になってしまい在留資格が不許可となる場合があるからです。
また外国人の方は入国後、
- 受入れ企業などが実施する生活オリエンテーションの受講
- 管轄の市区町村などへ住民登録
- 給与口座の開設
- 住宅の確保
などに取り組むことが必要です。
これらの支援を受けて生活する準備が整ったら、雇用先での仕事を開始できます。そして受入れ企業は、外国人の雇用や支援状況などを定期的に入管当局へ報告しなければなりません。
具体的には、
- 受入れ状況に係る届出書
- 支援実施状況に係る届出書
- 活動状況に係る届出書
などです。
詳しくは出入国在留管理庁のホームページをご参照ください。
特定技能により企業の人材不足の解消につなげられる
近年の日本は、職種や業種によって人手不足に悩んでいる企業も多いのが現状です。そんな状況を打開するために政府が打ち出したのが、より多くの外国人が日本で働けるようになる「特定技能」という新たな在留資格になります。
現在では、最大5年間の在留となる「特定技能1号」しか取得できる環境が整っておらず、技能実習の延長という側面が強いです。しかし今後の政策で在留期間に制限のない「特定技能2号」も実装されるなら、日本人という枠組みに捉われずに優秀な人材を雇用できるチャンスが広がります。
もし新たな人材の確保や外国人労働者の受け入れを検討しているのであれば、ぜひ「特定技能」の在留資格に目を向けてみてはいかがでしょうか。